第2話

「会えないおばあさん。」
72
2018/03/21 10:13
なる
ん…朝……か
ベットの横にある窓から
ひのひかりが差し込んでくる。
“コンコンッ”
なる
はーい
千里
入るぞ
そう言ってエプロン姿の千里が入ってきた。
なる
起きるの早いね、千里…
春休みなのに……(眠)
千里
当たり前。しかも、
店やってるって言ったじゃん。
開店するから手伝って。
なる
了ー解デス…
千里
寝るな
なる
んっはい。
急いで着替え、私は一階へと向かった。
千里
この商品をその棚に並べて。
並べ方はお前に任せる。
んーあぁでもこっちの箱の中のが
目立つように飾って。
なる
オッケーです。

それにしても綺麗だね……
箱のなかにあったのは
草花がモチーフにされている
小物やアクセサリー類。
手作りということもあってどれも違って素敵。
千里
今回は特に自信作だらけだから
誰か買ってくれると嬉しいかな。
そういって千里は優しく微笑んだ。
不意の笑顔ほど心に来るものはないよな…。
どきっとするじゃん。
なる
無自覚でやってるのがたち悪い。
千里
んん?なんて言った?
なる
たち悪い。
千里
はぁ?どっからそうなるんだよ。
なる
なーんでも。働いてきまーす。
千里
変なやつ…
棚に飾り付けながら店を見渡してみると
本当に綺麗…。どこも、綺麗に掃除してあって
どの商品も素敵な物ばかり。
なる
良い店だなー
おばあさん
そうでしょ。私もお気に入りなのよ。
なる
!?
おばあさん
あらあら。ごめんなさいね。
驚かせてしまったかしら。
新入りさん?
いつも千里くん一人で
お店をやってたみたいだし、
賑やかになりそうね。
なる
いっいらっしゃいませ。
今日からしばらく
お手伝いさせてもらうんです。

よくこのお店に
いらっしゃるんですか?
おばあさん
そうねぇー。
よく遊びに来ているの。
それも今日が最後なんだけれどね。
なる
え?最後…?
おばあさん
んふふ。お嬢さんは
私達とは“違う”ようね。
なる
何がですか?
おばあさん
そうねぇ…あなたは…
千里
いらっしゃいませ。
おばあさん
あらあら、千里くん。
おはよう。
千里
頼まれていた商品、
出来上がりましたよ。
おばあさん
あら、ほんと。
ありがとうね。
そろそろかと思って来てみたの。
早く来て良かったわ。
千里
こちらです。
ご確認を。
そういって千里が
おばあさんに白い箱を差し出した。

箱のなかには懐中時計に草花がモチーフの
飾りがついている、
お花がたくさんの草原が思い浮かぶ
素敵な商品が入っていた。
おばあさん
あらまぁ!ありがとう。
懐かしいわ…。
おじいさんと行った、
あの場所が思い浮かぶ。
本当にありがとうね。
なる
素敵な懐中時計ですね。
おばあさん
そうなの。素敵でしょ。
もう一度見れるなんて…
思っても見なかったから…
おじいさんがくれた懐中時計と
思い出の場所が一緒になるなんて
本当に素敵ね。
私は幸せ者だわ。
おじいさんのことが大好きなんだな…。
おばあさん、とっても幸せそう。
千里
それは良かったです。
おばあさん
本当にありがとう。
じゃあ、受け取ったことだし
そろそろ失礼するわね。
千里
はい。お元気で。
おばあさんは懐中時計を握りしめて
笑顔で帰っていった。
なる
千里のお仕事って素敵だね。
おばあさん嬉しそうだった。
それに千里の作るもの…
すっごく綺麗。
千里
そんな、ほめられると反応に困る…。
千里は照れながらも嬉しそうに言った。
千里
お前は素直に言葉がでるし、
それにお前の言葉は本当に感じられて
なんだか、元気出るな。
なる
なら、よかったです。
千里が嬉しそうなのは
私も嬉しいしね。
千里
おまっ…よくもまぁそんなことを
笑顔で…無自覚すぎ。
なる
あっ!!!
おばあさんかばん忘れてってる!!
千里
あぁそれなら…店があずか…
なる
今なら追いかけたら間に合うよね?
ちょっと行ってくる!!
千里
おいっまて!!なるっ!
おばあさんは……
なる
おばあさーーん?
なる
いないな…ここは一本道だし、
おばあちゃんは歩きで…
町のほうまでこの短時間で
行けるはずがないのに…
道をいくら進んでも
おばあさんと再び出会うことはなかった。
千里
おかえり。
なる
ただいま…。
おばあさんと会えなかった。
まぁ店で預かっておけば
そのうちとりに来てくれるよね。
千里
ん、ああ。そうだな。
なる
あっいらっしゃいませ!
千里
いらっしゃいませ。
おばあさんのことは不思議だけど。
離れたところで車が待ってたのかもだし。
仕事しないと、だよね。

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