第4話

「はぐらかしてきた、真実。」
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2018/03/25 02:50
千里
朝だぞ。
なる
ん…おはよう…
千里
おはよ
ぐっすり眠れたらしく、
いつもは怖い夢を見ていたが今日は
なにも見ることはなかった。
千里
よし。朝ご飯の支度してくるから
着替えたら降りてこいよ。
なる
分かった。ありがとう!
今まで記憶喪失や家族のことを何だかんだで
あやふやにしてきたまま来てしまった。

千里と出会ってから何日たったのか、
ここがどういう場所なのか。

千里と一緒にいる時間が心地よすぎて
考えないようにしていた現実に
目を向けなければならない。
私は急いで着替え、一階へと降りた。
千里
今日はスープと野菜オムレツ。
パンもあるから欲しがったら言って。
なる
パン欲しい。
千里
了解。
千里は私用のパンを焼いてくれ、
二人で朝ごはんを食べ始めた。
なる
あのさ、千里。
私さ記憶喪失や家族のことに
しっかりと向き合おうと思うんだ。

今まであやふやにしてきたことを
やっぱりしっかりと知ってきたいし…
千里
そっか。
なる
んでさ!千里の家って
カレンダーが見当たらないんだけど
私が千里と出会ってから、
何日ぐらいたった?
千里
んー、1ヶ月ぐらいじゃね。
なる
え、そんなに…か。




ん?

待って…おかいしよね。
千里春休みだから暇って…
4月の始めらへんに出会って
1ヶ月たったんなら
もう春休みは終わってる。
千里…学校は…?
千里
……。
なる
何で答えないの?
千里
……ごめん。
なる
ごめんじゃないよ!
謝らなくて良いの。
答えて?
ここはどこなの?
千里
…………
なる
なんで!?
千里
…………
なる
私が“違う”から答えられないの?
思えばみんなおかしいんだよ!
おばあさんはいなくなるし、
あれから黙ってはいたけど
小さい子が山道で
突然姿を消したのも見たの!
千里
“違う”からじゃない!
俺が巻き込んだから…
ごめん。ほんとに。
なる
なんで!教えてくれないの…
一体ここはどこなの…?
巻き込んだって?
もう、分かんないよっ!!!!!
千里
なるっ!!!!
私は千里にそう言い放ち、

千里と出会ったあの丘へ走り始めた。
なる
私は…なにも知らないんだ。
でも教えてくれないと分かんないよ。
一体誰なの?どこなの?記憶は?
みんな私のことを“違う”っていう…
消えていく人々…

意味わかんない!!!!
私は叫び疲れて、
丘の上の木の下に座り込んだ。
千里と出会った場所。
なる
私はどうしたら良いんだろ…
なにがどうなってるの。
私も変だけどここの人たちも変。
涙がとまらない。今まで泣いてなかった分、
どんどん、涙が溢れてくる。
なる
かたっ…
手がなにか固いものに触れたことが分かった。
なる
なにこれ…?
なる
携帯…?誰の?
失礼かと思いながらもスマホを開き、
名前を見てみると


そこには赤石なると書いてあった。
なる…?千里がつけてくれた名前…
だけどもし、これが私の携帯で
本名が赤石なるだったら、
なんで千里は私の本当の名前を知ってたの?
なる
千里…
私には千里に聞きたいことがたくさんあるんだ。
はぐらかされても聞かなければならない真実。
私は丘をくだろうと立ち上がった。
千里
なる!
なる
千里…
なる
千里っ……!
あのね、千里。
私の携帯らしきものが
ここに落ちてて…
千里と出会ったときはなかったよね…
この携帯を開いてみてみたら
赤石なるって書いてあっあの。
なる、って千里がつけてくれた名前だよね。この携帯が私のだったら、
なんで千里はなるっていう名前が
わかったの?偶然?
千里は驚いた顔をしていたが
すぐに口を開いた。
千里
知ってたんだ、お前の名前。
俺が忘れるはずのない、
大切な名前。
なる
どういうこと?
千里
ごめんな…はぐらかして。
もう、終わりにしないといけない。
お前に話そう、全て。
“この世界”のことも。
そう言うと千里はゆっくりと話始めた。

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