彼は満面の笑みで言う。
大切な人が目の前にいる。
そのことがこんなにもうれしいなんて…
私の想像をはるかに越えてしまった。
せんり…ううん。
ちさとくん…。
彼の柔らかい口が私の口に重なる。
それが、
懐かしくって…
いとおしくって…
━━ずっと、会いたかった人。
目の前にいるのは明石千里(せんり)
せんりではなくて
松井千里(ちさと)…。
せんりの面影にちさとくんが重なりあって
いとおしさが増す…。
彼はまっすぐに私を見て言う。
私はちさとくんがもう好き…。
早すぎって思われるかもだけど…
せんりと、ちさとくんが重なりあって
私が好きなのはこの人だけだって
身体中がうずいてる…。
私がちさとくんのことが
好きだってこと…
私のことを好きにさせようと頑張ってる
ちさとくんが可愛いから
しばらく黙っておこう…。
━━世界でただ一人の大切な人。
ちさとくんが再び私に指輪をはめてくれるまで……
………………
……………
………
……
…
《あと、もう少し。》
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!