第9話

「本当の始まり。」
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2019/10/04 11:53
なる
ちさとくんが言ったことの意味?
ちさと
そうです。
ちさと
俺は
“前世の人も好きだった人”
が好きなんです。

そして、俺はあなたが好き。


……これが表すことは?
なる
その…前世の話に出てくる
彼女が私だとっ!?
ちさと
そうなりますね。
彼は満面の笑みで言う。
なる
待ってよ!その、彼女は
天国の手前の世界で
その男の子と少しの間、
一緒に過ごしてたんでしょ?

私にそんな覚えないよ?
ちさと
何らかの事が原因で
記憶がなくなっているんでしょうね。
何か心当たりありませんか?

俺は…
あっ!その指輪とか。
あのときは、左手につけてくれたのに
今は右手。
なる
なんでそれを知ってるの!?

私…高2の春の記憶が一部分
抜けてるところがあって…
その時、左手の薬指に
この指輪があって…っ
ちさと
思い当たる縁、
大有りじゃないですか~。

なんで知ってるって…
俺がはめたんですもんその指輪。
まぁ、正しくいうと前世の俺?
なる
でも……そんなわけっ
ちさと
いい加減認めてくれませんかね?
あ~……あの人とずいぶん違うから
認めてくれないんですかね……。
千里
早く認めてくれないかな?
なる。
千里だよ?
忘れた…何て、言わせないから。
なる
んっ!!
千里…
千里
ごめん…ずいぶん待たせたかな…。
やっと、会えたな。
おんなじ世界で。
なる
千里だ……
ちさと
泣かないでくださいよ!
記憶…思い出しました?
なる
ううん…でも千里…
大好きな…。
どうしても涙が
ちさと
(なるさんを泣かせるのは
やっぱりあいつ…か。
俺のことで泣いてるんじゃないのが
気にくわない…。)
ちさと
これからどんどん思い出させて
いきますから。
覚悟しててくださいよ?
なる
ほんとなんだ…。
千里が…。この世界にいる。
ちさと
せんりなのは
間違いではないんですけど
あなたの目の前で
あなたが好きなのはちさとです!

これは間違えないでください。
なる
ごめん…。
ありがとう。ちさとくん。
本当にありがとう…。
私とまた、であってくれて。
ちさと
いえ…こちらこそですよ。
ありがとうございます。
なる
もういい…//////
私の前では
敬語は良いから…。
変な感じするし。

急に態度変えてキモいよね…
ごめん!忘れてっ
ちさと
っ!
ちさと
了解。なる。
ありがと。
なる
あぁ!
せんりだぁ………っ。
どうしよ…せんりがいる…
ちさとくんが…私の前にいる…
大切な人が目の前にいる。
そのことがこんなにもうれしいなんて…

私の想像をはるかに越えてしまった。

ちさと
なる…
せんり…ううん。

ちさとくん…。

彼の柔らかい口が私の口に重なる。

それが、
懐かしくって…
いとおしくって…



━━ずっと、会いたかった人。
ちさと
俺ら…運命的だよな…。
この世界でまた会えた。
なる
魂は繋がってるんでしょ?
ちさと
それ…
なる
ちょっとずつなんだけど
記憶の断片が浮き上がってくる…。
ごめんね。全部思い出せなくて。
ちさと
大丈夫だからっ!
俺もまだまだ
思い出せないことが多い…
なる
そっか。
ちさと
これからは2人なんだし…っ。
これからゆっくり思い出していこ。
なる
うん…っ。
目の前にいるのは明石千里(せんり)
せんりではなくて

松井千里(ちさと)…。

せんりの面影にちさとくんが重なりあって
いとおしさが増す…。
ちさと
今はまだせんりが好きかもだけど
絶対俺のこと、好きにさせるから。
彼はまっすぐに私を見て言う。
私はちさとくんがもう好き…。
早すぎって思われるかもだけど…

せんりと、ちさとくんが重なりあって
私が好きなのはこの人だけだって
身体中がうずいてる…。


私がちさとくんのことが
好きだってこと…

私のことを好きにさせようと頑張ってる
ちさとくんが可愛いから
しばらく黙っておこう…。
ちさと
それじゃあ、話をもとに
戻しますか。
なる
小説だね。
ちさと
俺…俺らのことを書き記したい…。
なる
同意見。
賛成だよ。

そうと決まれば忙しくなるよ!
期待の新人くん。よろしくね。
ちさと
はい!!

━━世界でただ一人の大切な人。

ちさとくんが再び私に指輪をはめてくれるまで……
………………


……………
………

……





      《あと、もう少し。》

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