千里
この世界はお前が本来いるべき世界
とは違うんだ。
ここは死んだ人が来る世界。
でも天国とか地獄とかとは違う。
なるがいた世界と重なりあっていて
でも、お互いの住人は
関わることがない…
まぁ、複雑な世界なんだ。
この世界にいる人は死んでいる人。
でも、深い未練がある人。
なる
え…?千里は死んでるの…?
千里
そうなるな。
なる
うそ…
私も死んでるの?
千里
それは違う。
お前は何らかの理由があって
この世界に来てしまった。
それがこの世界の住人から
“違う”と言われている理由。
お前がまだ生きているからな。
なる
じゃあ、おばあさんたちが
消えていくのはどうして?
千里
この世界は
天国・地獄と生きてる人の世界の
狭間にある世界なんだ。
そして未練がある人だけが
この狭間の世界に留まる。
その未練がなくなり、幸せだと
感じることができた人が
天国・地獄に向かう。
まぁ、この世界にとどまってる人は
大体天国行きの人々だよ。
なる
じゃあ、あのおばあさんたちは
幸せになったから
消えていったんだね……
千里
そうだよ。
なる
千里がつくっているアクセサリーは?
千里
未練がある人がすこしでも
幸せな思いができるように
つくっている。
なる
そうだったんだ…
なる
千里がこの世界にいるってことは、
未練があるってことだよね?
千里
あぁ。
千里は優しく…それでいて悲しそうに頷いた。
なる
聞いても良い…?
未練のこと。
千里
あぁ、もちろん。
長くなるけどいいか?
なる
うん。いくらでも聞く。
千里
俺が生きていた頃の話からしようか。
俺は体が弱く、学校にも行けなくて、
家でお母さんやおばあちゃんと
暮らしていた。
父は海外で仕事をする人で
なかなか会うことは出来なかったけど
毎晩電話をくれて、
家族みんな幸せだった。
これは俺が小学、3年生のとき。
千里
そして、
体が良くなることはなかったけど
すこし元気の時は学校に顔を出して、
友達と遊んだり、楽しかった。
そんなとき、父が海外で
事故にあったと、電話がはいった。
母は俺をおばあちゃんに預け、
急いで海外へと向かった。
幸い、父は足を骨折するだけですんで
生きていた。
父は休暇をもらい、母と共に日本へ
帰ってくるとこになった。
俺は父に会える!とすごく楽しみで…
いまかいまかと待っていた。
千里
でも、
父も母も帰ってくることはなかった。
帰りの飛行機で事故にあったらしい。
飛行機で事故ってかなりの確率なのに
なんで俺の家族がって話だよな。
ほんと運悪い。
千里
それから俺は
おばあちゃんと二人暮らしになった。
おばあちゃんに
あまり迷惑をかけないように
一人で出来ることはやるようにした。
おばあちゃんも
そんなに元気な方ではなく、
俺の面倒をみるのでやっぱり
疲労はたまっていったんだろう。
俺が小学5年生にあがるときに
おばあちゃんも、息を引き取った。
俺の周りの人ばかりが死んでいく。
俺がこんなに弱いばかりに。
俺のせいで……。
俺はひどく落ち込み、
一人になるようになった。
家族はいない。誰も。一人ぼっち。
千里
おばあちゃんの
お葬式に参加している時、
一組の家族が俺に話しかけてきた。
「家族にならないか?」と。
俺はまた俺のせいで
誰かを殺してしまうとおもい、
断った。
だけど何度も何度もその家族は
俺に声をかけてくれた。
なる
もしかして…千里は……
千里
そうだよ。その家族はお前。
覚えてたかな?
なる
忘れるわけないじゃん!
千里くんだ…確かに千里くんだ…。
千里は私の返事を聞き、
優しく微笑んだ。
千里
俺はもう一度家族ができるなら
どんなに幸せだろうとおもい、
赤石家の家族に
なってみることにした。
優しい、新しいお母さんにお父さん。
可愛い、いっこうえのお姉さん。
毎日が、幸せだった。
俺は中学生になることができた。
優しい家族に友達。
毎日が幸せで楽しかった。
苦しいことがあったけど
今はこんなに幸せで本当に嬉しかった。
そして俺は
中学2年生になりしばらくして
息を引き取った。
千里
泣くなよ、なる。
私は千里の話を聞いている間に
知らずと涙が溢れてきた。
なる
千里くん…3年前に亡くなった、
千里くんだったんだ……。
千里
死んだことは別に良いんだ。
俺は体が弱かったのに
こんなにも多くの幸せをもらって
本当に幸せだったんだよ。
でも、1つだけ心残りがあったんだ。
なる
……?
千里
大切な大切な…お姉さん…
なると高校生とか…さ。
まだまだやりたいことが
たくさんあったこと。
未練があったからかぁ
この世界に
長いこと留まってしまった。
ずっと、お前をここから見守ってて
お前が高校2年生になっても
ずっと、な。
だけど俺はそろそろ
消えないといけない。
ここでお前を見守っていても
触れることはできない。
だから、最後のお願いで
お前に一度だけ触れたいと思ったから
お前を……
こんなことに巻き込んでしまった。
ごめん。
なる
こんなことって………!
そんなこと言わないでよ!
千里と生きてるときに出会って
楽しい毎日を過ごして、
それでも千里は死んでしまって…。
私は千里になにができたのかって…
ずっと、ずっと心残りで…っ
まだまだ私だって千里と
やりたいことがたくさんあったんだよ
千里
ありがとう。
記憶…戻ったな。
なる
あれ…?ほんとだ…
千里
たぶん、俺が隠してたから
お前の記憶も
塞がれてしまってたんだろう。
なる
千里…
千里
そして、俺の願いはかなって
そろそろ消えなければならない。
なる
うそっ…………!
そんな、まってよ。
千里
良いんだよ。
これが人間の運命なのだから。
千里の話が終わり、待っていたかのように
私の携帯がなり始めた。
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