目が覚めると私?は木の下にいた。
ここはどこで私は誰なのか…
なにもかも思い出すことができない。
太陽がこちらを見下ろしていて…
きらきらと輝き、あたたかい。
まず、状況を整理しよう。
私は記憶がなくって名前も何も思い出せない。
ここがどこなのかも。なにかもかも。
周りには人がいなくて丘の上に一人ぼっち。
人がいて良かった…という安心感はあるけど
この人なんかぼーっとしてるな…
季節すら覚えてないなんて
さすがに怪しまれたかな……。
お昼寝少年は驚き不思議そうな顔で
こちらを見ている。
あぁー本当にどうなるんだろう。ワタシ。
少年はどこか寂しそうに
「よくあること…」と言った。
不思議な人だな……。
よろしくと言ってもどう、よろしくするのか
分からんけど…ね。
なにもかも分からないけど
なんとか生きていかなければ
どうにもならない。
あぁーこういうときってなんか
変に強くなれる気がするわぁー…。
この人はなんていうことを言うんだ…
さっきあったばかりの私に…
でも…私って行く場所ないし…
千里の誘いを断って
安全な暮らしをおくれる確率つて
どのぐらいの………?
いたずらっ子のように彼は笑っていった。
これから大丈夫か、私?
丘を下ってすこし町の外れの
森に入りかかったところに
一軒家がぽつりとあった。
“じゃない”?千里の言葉って
ちょくちょく変だなぁ
さっき、一瞬千里の顔が曇った気が…
まぁさっきあったばかりの私に
言えないことのほうがたくさんだろうし。
てか、部屋までくれるなんて…
男にしては華奢でかわいいし天使かよ。
まじ天使。
千里…この笑顔は本当に笑ってる。
よかったかな。
ていうか、この家2階建てだし
ほんと広いな。
2階に上り突き当たりの部屋の前についた。
なんとか、生活できそうだし
この調子で家族もみつけられたらな!
このときの私はなんとかなるという
変な自信で満ちていたが、
5月に入ってもニュースや、
行方不明の情報、私の家族について…
もちろん私のことについても
一切、
何もわかることはなかった。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!