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第1話

「私の場所。」
93
2018/03/20 13:21
???
ここ…どこ?
目が覚めると私?は木の下にいた。
ここはどこで私は誰なのか…
なにもかも思い出すことができない。
???
まぶし…
太陽がこちらを見下ろしていて…
きらきらと輝き、あたたかい。
???
どうしよ…か。
まず、状況を整理しよう。
私は記憶がなくって名前も何も思い出せない。
ここがどこなのかも。なにかもかも。

周りには人がいなくて丘の上に一人ぼっち。
???
あぁー、整理したって
情報が無さすぎる…
なんもわかんない。
どうしろって言うんだよー
はぁ…
???
どしたの、お前。
???
うわぁっ!!!
人いたんだ……木の上とか…
びっくりしたぁー…
???
ごめんごめん!
人が寝てるなぁって思ったら
自分も眠たくなって
木の上で俺もお昼寝中でしたもんで。
起きたらお前が起きてた。
???
そう。
確かに気持ちのいい日だよね。
あったかい。
人がいて良かった…という安心感はあるけど
この人なんかぼーっとしてるな…
???
あったかいし…今は春?
???
何お前。季節ぐらい分かっとけよ。
4月だし春に決まってんじゃん。
???
そー。ありがと。
???
お前名前は?
季節すら覚えてないなんて
さすがに怪しまれたかな……。
???
名前か。分かんないの。
私が誰で家族がいるのか、
ここはどこなのか。
???
っ!?
お昼寝少年は驚き不思議そうな顔で
こちらを見ている。
???
あんたが不思議な顔をするのは
もっともで分かるけど…
現状に一番不思議な気持ちを
いだいているのは
私ですよ。
???
まぁそうなんだろうけど、
まじか?
???
まじです。
あぁー本当にどうなるんだろう。ワタシ。
???
ふぅーん。名前がないと不便だよな。
なんかつけるか。
俺、つけていい?
???
はぁっ!?信じるの?
???
はぁ?お前が言い出したんだろ?
うそなのか?
???
ほんとだけど…でも
言ってることおかしいし、
あったばっかの人が
こんな変なこといってたら
普通信じないかなって…
???
俺の周りではよくあること…
だと思うよ。
???
少年はどこか寂しそうに
「よくあること…」と言った。

不思議な人だな……。
???
んっひらめいた。
“なる”ってのはどうだ?
お前の名前。
???
もう名前を考えててくれたんだ…

いいよ。なるで。
なんでも。好きなように呼んで。
ていうかあんたは何くん?
???
俺は千里(せんり)。
よろしくな、なる。
???
ん。よろしく千里。
よろしくと言ってもどう、よろしくするのか
分からんけど…ね。
なる
はぁーなんなんだろうね。
千里
記憶喪失のこと?
なる
うん。なんでこんな丘の上で
記憶喪失になってて…
意味が分からない。
千里
まぁそうだけどお前も
家族はいたんだろうし、
しばらくしたらニュースにでも
なるんじゃない?
なる
まぁ、普通ならそうか。
なにもかも分からないけど
なんとか生きていかなければ
どうにもならない。

あぁーこういうときってなんか
変に強くなれる気がするわぁー…。
千里
俺のとこ、くる?
なる
はい?
千里
おれんちくる?っていってんの。
一人暮らしだし
俺以外に迷惑は誰にもかからんし、
記憶喪失なことを
あまり人に知られないという
めんどうがなくなるメリットもある。
なる
まじかい。
この人はなんていうことを言うんだ…
さっきあったばかりの私に…
千里
くる?こない?どっち
でも…私って行く場所ないし…
千里の誘いを断って
安全な暮らしをおくれる確率つて
どのぐらいの………?
なる
いく。いかせていただきます。
千里
よろしい。
こっち。ついてきて。
なる
うっうん…。ありがと。
いたずらっ子のように彼は笑っていった。

これから大丈夫か、私?
千里
ここ。
丘を下ってすこし町の外れの
森に入りかかったところに
一軒家がぽつりとあった。
なる
私と同い年ぐらいなのに
一軒家で一人暮らし?
千里
そう。この辺は安いから
そういう人多いんじゃない?
“じゃない”?千里の言葉って
ちょくちょく変だなぁ
千里
んで、まぁ、普通に考えて
男の俺が結構広い一軒家で
掃除に家事にって大変だし、
俺、店やってて忙しいわけですよ
なる
ほう。掃除と家事をやってくれと?
千里
ご名答。
なる
了解。住まわせてもらうんだから
そのぐらいやるよ!
てか、店って?
千里
趣味でちょっとね。
小物的なやつ。
アクセサリー系が多いかな。
なる
ほうほう。それはまた。
でも千里にあってるね。
千里
そんなこと初めて言われた。

で、なるのことだけど
記憶喪失ということで、まぁ
行方不明になってることだから
そのうちニュースにもなるだろうし
俺も協力するから
家族、探していくってことで
いいか?
なる
うん!ありがと。
千里に会って本当に良かったよ。
見ず知らずの私にここまで…
ほんとありがとう。
千里
ううん。良いんだ。
全然大丈夫。
春休みでこれといった用もないし。
千里
俺の責任でもあるんだろうしね…。
なる
今なんて?
千里
いーや。なんでも。
なるの部屋に、案内する。
さっき、一瞬千里の顔が曇った気が…
まぁさっきあったばかりの私に
言えないことのほうがたくさんだろうし。

てか、部屋までくれるなんて…
男にしては華奢でかわいいし天使かよ。
まじ天使。
なる
ありがとう、天使。
千里
なんで天使?
なる
かわいいから
千里
俺男だよ?次言ったら
追い出す。
なる
ごめんって!
千里…この笑顔は本当に笑ってる。
よかったかな。
ていうか、この家2階建てだし
ほんと広いな。
2階に上り突き当たりの部屋の前についた。
千里
ここつかって。
家具も前の住人のが残ってるし
掃除すれば使えると思う。
なる
おぉ!ありがとう!!
なんとか、生活できそうだし
この調子で家族もみつけられたらな!
千里
家族…早く帰れるといいな。
なる
そうだね!
この調子でがんばりますよ、私。
このときの私はなんとかなるという
変な自信で満ちていたが、
5月に入ってもニュースや、
行方不明の情報、私の家族について…
もちろん私のことについても
一切、


何もわかることはなかった。

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