第60話

魔法少年
2,177
2024/03/23 11:56








ホソク
ホソク
長くなっちゃったけど、僕の話はこれでおしまい。聞いてくれてありがとね。
ジョングク
ジョングク
んーん、ホソクさんこそ、話してくれてありがと。


重い身の上話を聞かされてお礼を言ってくれるなんて、ほんとに優しい子だ。

ジョングク
ジョングク
あのね、ホソクさん…
ホソク
ホソク
なぁに?
ジョングク
ジョングク
このおうちに来る前にね、僕も…ホソクさんとおなじこと考えたの。
ホソク
ホソク
おなじこと?
ジョングク
ジョングク
ん、、からだを売るしかないって…
ホソク
ホソク
……そうだったんだ、、
ジョングク
ジョングク
でもね、そのとき、テヒョンが浮かんだんだ。名前も知らなかったし、ちゃんと話したこともなかったんだけど、それでも…テヒョンの顔しか浮かばなくて。
ジョングク
ジョングク
それでね、このひとにだったら…、そう思って、テヒョンに声をかけたの。僕を…お金で買ってもらおうとして。
ホソク
ホソク
…それで、この家に来たんだ?
ジョングク
ジョングク
ん、、


なるほど、そういうことだったんだ。

うちのあるじのことだから、きっとこの子の抱える事情まで把握して、保護することにしたんだろうな。


ホソク
ホソク
よかったね、テヒョンさんが救世主で。


こくんと頷いたまま、俯いてしまったジョングギ。


それきり口も開かないから心配になって、向かいから隣へ移動して顔を覗き込んだ。


ホソク
ホソク
どうしたの? 疲れた?


ふるふると首が振られる。
ジョングク
ジョングク
……僕にはテヒョンがいたけど…ホソクさんはちがう…誰にも、、助けを求められなかったんだもんね…
ホソク
ホソク
ジョングガ…
ジョングク
ジョングク
僕ね、からだを売るしかないって思って…でもテヒョン以外のひとにって考えただけで、すごく怖かった…

あごを上げたジョングギの瞳は、いまにも溢れそうなほど涙を溜めてた。

ジョングク
ジョングク
ホソクさんは…僕の感じた怖さなんかより、もっとずっと怖い思いしてたんだよね…すごく…つらかったよね…


必死に泣くのを堪えながら、僕の右手を両手できゅっと握ってきたジョングギ。


子ども体温、なんて言ったら、この子は拗ねたりしちゃうかな?


でもなんかほんとに、あったかい手。


きっと体温だけじゃないそのあたたかさが、胸の奥深くまで届いてる気がして、、




ああ、なんでだろ…

不思議と、ほんの少しだけ、

泣いちゃいそうになった。




僕は自分の話をしてる時、一度だけあの人の前で泣いたきり、これまで泣いたことがない。


もちろん怖かったし、つらかったし、自分の身体を汚く感じて、苦しんでた時期もあった。


それでも僕を救ってくれたあの人をはじめ、まわりの人たちの優しさに触れて、乗り越えていくことができた。


だから今の僕にとっては、過去の苦しみ。


当時のことを引きずりもしてないし、身体を売りものにしてたことを、後悔したこともなかった。


どんな手段であれアッパを入院させてなかったら、きっと助かってなかったから。





なのに、、

自分でも、なんで泣きそうなのか分からなかった。






……ううん、うそ。

ほんとは、、気づいてる。




ホソク
ホソク
つらい時もあったけどね、後悔は…してないんだ。ただ病気が再発して、3年前にアッパがお空にいっちゃって…
ジョングク
ジョングク
え、、
ホソク
ホソク
アッパにね、最後まで言えなかった。僕が身体を売ってたこと…。それがずっと、、心残りだった。
ホソク
ホソク
でも、言わなくてよかったって思いのほうが強いんだよ? だって知ったら、アッパは自分を責めただろうから…



僕はなんでこんなこと話してるんだろう…



そう思っても、勝手に懺悔がこぼれていく。


ホソク
ホソク
だけどアッパにずっと嘘をついてた僕は、もしかしたら…親不孝者なのかな…とか、たまにね、考えちゃったりして…



こんな話、誰にもしたことなかったのに、ほんとどうしちゃったのかな…



だいたいこんなの、15歳の子に話すようなことじゃないのに、、


ホソク
ホソク
ごめんね、こんな話…




視線を上げると、大きな目とかち合った。



優しいひかり射す、早朝の湖のように澄んだ瞳。



その凛とした清らかさから、目が離せない。



ジョングク
ジョングク
僕より年下だったのに、ホソクさんはすごいね。自分のちからでアッパを助けようとしてたんだもん。その気持ちが強くて、かっこいい。
ジョングク
ジョングク
それに、きれぇ。
ホソク
ホソク
え?
ジョングク
ジョングク
アッパを救いたいって一生懸命だったホソクさんも、いまでもアッパのことを思い続けてるこころも、すごくきれぇだね。
ホソク
ホソク
っ………




もし僕が逆の立場だったら、

天国のアッパはきっと分かってくれてるよ。

とか言ってたのかな。




きっとその言葉でもありがたく受け取ってただろうけど、ジョングギのこの少しずれた、なぐさめなのかも分からない言葉は、やけに僕の心を打った。



ジョングク
ジョングク
僕もホソクさんみたいに、強くてかっこいい、きれぇな大人になりたいな…



そう言ったジョングギの白い頬を、すべるように流れた一筋のしずく。



なんて綺麗なんだろうと、思わず見とれてしまう。




そうして気づいたら、自分の頬も濡れていて。


ジョングク
ジョングク
んぅっ、…う、、ふぇっ…うぅ、



僕の涙を見たジョングギの涙腺が一気に崩壊しちゃって、それを見て僕もさらに泣くという変な連鎖が起きて、でも僕はこの子の泣き顔を見つめ続けてた。


だってこの子が涙のしずくを流すごとに、心の内側にこびりついてた錆が、ぽろぽろと剥がれていくような感覚がしたから。




お互いの涙が止まった後は、いっぱい泣いたね、なんてふたりで笑って。


ジョングク
ジョングク
ホソクさん目ぇまっかだよ!
ホソク
ホソク
ジョングギは目だけじゃなくて、鼻も真っ赤だけどね。



そんなことを言い合いながら、僕はかつてないほどの心の軽さを感じてた。


くふくふ笑ってるジョングギを可愛く思って、さらには、不思議な子だなぁと思う。


だってこの子の澄んだ瞳を見てたら、なぜか誰にも言えなかった、言うつもりのなかった思いを吐露していたし、綺麗さっぱりと浄化までされてしまったんだもん。




本当に、不思議な子。



ホソク
ホソク
ねえジョングガ、
ジョングク
ジョングク
なぁに?
ホソク
ホソク
君ってもしかしてさ、、、
ジョングク
ジョングク
んぅ?
ホソク
ホソク
、、魔法使い?
ジョングク
ジョングク
んぇ?





ぱちぱちと瞼が開閉されるたび、優しい魔法を纏ったひかりが、瞬いてるように見えた。

















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