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第1話

追憶 - JN
2,470
2024/03/23 11:53






プー、プー、プー、





流れてきた音に顔をしかめる。



ジン
ジン
話し中か…



調理室を後にし、廊下を歩きながらもう一度電話をかけてみた。




プー、プー、プー、




まだ通話中。


直接訪ねたほうが手っ取り早そうだ。


防犯カメラの確認の前に、誰かと電話中らしい相手の部屋へ寄ってみることにした。













コンコンッ、




ドアを強めに叩いてみたが、応答はない。


試しにドアノブを掴んでみる。




ガチャ、




呆気なく開いた扉。



ジン
ジン
入るよ。



人の気配は感じないが、一応声を掛けてから部屋の中へと進んでいく。



普段から整理された部屋。
特段変わったところもなければ、書き置きの類なんかも見当たらない。



ただ部屋にいないだけならいいけど…



現状ではまだ何とも言えないし、ひとまずソフさんからの報告を待つか。





部屋を出ようとして、ふと目に入ったフォトフレーム。

手を伸ばし、そっと持ち上げた。




1枚の写真に収められた、3人の人物。

そのうちのひとりはひょろりと痩せた子どもで、この部屋の主であるホソクだ。写真は11歳頃のものだと、以前に本人が教えてくれた。

ホソクを挟んで立つ男女は彼の両親で、3人とも楽しそうな笑顔を見せている。




けれどこの写真を撮った翌年に母親は病死に、その2年後には父親も病を患い床に臥した。


彼の家はもともと裕福とは言えず、頼れる親戚もいなかったため、父親に満足な治療を受けさせることが出来ないでいた。


支援を受けることも出来たはずだが、当時の彼らにその知識はなく、実際、母子・父子家庭できちんと法的保護を受けている割合は、実はそう高くないのが現実だ。10年以上前となると、余計に低かっただろう。


ホソクはほとんど学校には行かず、父親の看病と家事で過ぎていく日々。生活はさらに厳しさが増していたが、多くはない父親の貯金を崩しながら、なんとか生活をしていた。


それでも当時のホソクは、まだ14歳の子どもだ。そんな生活を続けるには無理がある。


ホソクが心身共に限界を感じ始めたのと同じくして、父親の病状が悪化した。


自分が何とかしないと。
極限の焦りの中で、短期間、短時間で稼げる仕事を必死で探していたホソク。


そんなある日、父親が寝入ってから夜の街で働き口を探していると、中年の男に声を掛けられた。


そうして彼は知った。14歳の自分でも、それなりの大金を稼げる方法があることを。


父親には絶対に言えないような方法。
けれど金はすぐにも必要だった。




考えて、

考えて、

考え抜いて。




彼は、自分の身体を売る決心をした。





それを間違いだったと言うやつもいれば、軽蔑するやつだっているかもしれない。


けど、ただホソクは必死だっただけだ。
ただ自分の父親を、救いたかっただけだ。


そんな彼を、一体誰が責められる?


待ってればそのうち改善する?
いつか誰かが救ってくれる?


ジン
ジン
世の中そんな甘くないんだよなぁ。



ホソクは14歳にして、そんな現実の厳しさを誰よりも実感していたに違いない。




だからテヒョンは、ホソクをジョングクの世話役として付けたんだろう。




幼くして厳しい現実の中に身を置いていた、ホソクとジョングク。




あいつらはきっと、

通じるものがあっただろうから。

















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