大鏡の写真の中で戸惑っている空が私達を見つめる。
「ってかここ、空がいた場所じゃねぇか?この本も空が見つけて広げたんじゃ」
そう言われてみればたしかにそうだった。
空は SFものが好きな海とは違って童話など美しい物語が好きだと言っていた。童話を調べていく空の様子なんだか目に浮かぶ。
「つまり、彼方は空が本に吸い込まれたと言いたいわけかな?」
沙耶香の冷静冷徹な言葉がこの場の空気にピシャリと鞭を打ち付け整える。
「でも、こんなの見たらそうだとしか思えない」
杏も同じように言い、最後には少しだけ唇を噛んだ。
「え、待って、表情が変わってる‼︎」
私達は同時に本を見る。
確かに写真の中の空は横を向いて泣きそうな表情でなにかを見つめていた。
「これはそういうことだね、かなりまずい」
ふと頭の中に校長先生の言葉が思い返される。
生徒が行方不明になるって…こういうことなのね?
ドンドンッドン
「おい、誰かいるんだろ??開けてくれ」
突然図書室の扉が叩かれた。
私は慌てて駆けつけると、なんとなくかけておいた鍵を開錠して扉を開ける。
「え、お前ら…」
それは先に帰ると言ったはずの男子たちだった。
「なにして…」
「出られない」
「は?」
「出られないんだよ‼︎この学校から」
はぁはぁと荒い呼吸がしんと静まる図書室内に響く。
その中で沙耶香が瞬時に動き、図書室の窓を開けようとした。
「なこれっ…開かないじゃない‼︎」
ガチガチになって動かない窓は小細工も仕掛けも何も無い。
私達は完全にこの如月中学校に閉じ込められたのだ。