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第1話

プロローグ
222
2021/07/05 08:13
滴る血と涙…



目が覚めたら、君に好きだと伝えるから


静寂の中、壊れた時計の針がチクタクと行ったり来たりを繰り返している。


力が入りカタカタと震える肩で、君は手に持つ包丁を反対の手で握りしめ、必死に床に押し付け動かないようにしている。

包丁を握りしめる指はだんだん赤く染まり始めていて、小指がすでに落ちていた。今すぐにでも腕ごと切り落としてやりたいほどだったけれど、俺はその場に立ちすくんで動けなかった。


君は言う事を聞かない自分の体に怯えて、それでも小さな声でこう言った。



君のことが好きなんだよ…

血と涙が混ざり、薄く赤くなった水は夕日に照らされてより恐ろしく感じられた。

君の頬から、涙か垂れて落ちるたびにその水に小さく水紋を作っていた。

人を愛しただけに、殺したくなるなんて1番苦しいのは君だってわかっている。

ただ純粋に恋をしていたかっただけなのに、この世界は…


「なんて残酷なんだろう」








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