「ちょっと彼方毎回アタックでミスんないでよ」
身長が低いくせにやたらとバレーボールで前に出て行こうとする彼方に私は呆れて呆れて呆れ尽きた。
「いや今のは俺じゃなくて緋色のトスが悪い」
そういうと彼方は、自分の髪の毛をクシャリと掴み天井を見上げた。
隣で見てる私は彼方の横顔をじっと見つめて、何も言わずにそっと手元のボールに目を移した。黄色と青が交互に繋がっている表面はツルツルで、天井のライトを軽く反射している。
「次の試合始めるってよ」
先程彼方に文句を言われていたけれど、全く気にした様子もない緋色沙耶香は私たちにそう呼びかけると、私の手元のボールを取って先にコートに入っていってしまった。
「彼方もいつまでも天井見てないで行こ」
私は彼方の横顔をもう一度確かめてからコートへ入った。
「やっぱあいつの目、綺麗なんだよなぁ」
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。