次の日にはその事を和彩達にも話した。すると何故か鈴木くんの時以上の祝福モードに包まれた。
「キター!健吾くん!絶対健吾くんだよ!行っといで里奈!」
特に和彩は健吾押しなので、大喜びしていた。
「里奈、健吾くんとそのまま付き合っちゃえって!」
「だからー!健吾とはそういう関係じゃないの!健吾にも失礼だよ!健吾だって、私の事そんなふうに思ってないよ」
と私が言うと、一瞬無言になって、3人に何かを目線で訴えられた……気がした。
〈いや、絶対健吾くん、里奈のこと好きだろ〉
するとそこへ、
「なになにー?里奈ちゃん、デートすんの?」
窪塚くんが現れた。
「ぎゃっ!!窪塚くん!!」
「ちょっと、化け物出た!みたいなリアクション止してよー」
恐らく窪塚くんは鈴木くんに会いに来たのだろう。
「誰とデートすんの?拓馬?拓馬?」
窪塚くんは興味津々にそう言ってニヤニヤしながら私の顔を覗き込んできた。
「鈴木くんは24も25もバイト!」
と言うと、窪塚くんはスっと引いて
「あぁ、そんなような事言ってたなぁ。バイトとその後先約がある的な…」
「先約?」
「てか、あと里奈ちゃんがデートするって言ったら誰!?」
窪塚くんは私達4人に目配せをした。そしたら亜由がストレートに健吾である事を答えてしまったのだ。
「前田健吾!?ええ!文化祭の彼女役ミッションの時の子じゃん!ひぇー!マジ!?」
なんて話していたら、そこへ篠山くんがやって来て、
「窪塚!なんだ来てたんだ!ちょっと来いよ!」
と言って窪塚くんを拉致って行った。
窪塚くんは篠山くんに用があったのかな。
それにしても窪塚くん、驚いていたな。元々窪塚くんは、私が鈴木くんに恋をしていること自体に喜んでくれてたし、私の片想いを応援してくれている1人だったから、さっきの窪塚くんの様子を見て、なんだか私は彼の事を裏切ってるような複雑な気分にもなった。
いや、でもこれはデートじゃない。
私はただ、健吾と遊びに行くだけだ。
健吾は私の後輩であって、友達なだけだもん。
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篠山と話し終わった俺は、机に突っ伏して居眠りしている拓馬を叩き起こした。
「おい!おいったらおい!」
「あ゛ぁ!?」
やべぇ、コイツが寝起きはめちゃくちゃ不機嫌になる事忘れてたぜ。
「なんだよ恭平。起こしやがって畜生め」
「目付きわっっる!!」
拓馬は、“俺は今物凄く機嫌が悪いです”と言わんばかりの顔をしていた。
「なんだ……。用があるなら話せコラ」
寝起きの声はいつもより低い。地割れでも起こりそうだ。それから拓馬に俺は、里奈ちゃんが前田くんとデートする話を伝えた。
「へぇ……で?」
無論コイツはどうでも良さそうな態度でその話を聞いていた。
「で?じゃないよ。先約の子と出かけてる場合?」
実はコイツ、25日は18時にバイトが終わった後に、後輩の女の子からご飯に行こうと誘われていて、まあ別に良いかくらいに軽くその誘いにOKしていたのだ。
後々、その話を拓馬から聞いた時に俺がこう言ったわけだ。
「待て拓馬。25日ってクリスマスじゃんよ!クリスマスに誘ってくるなんてそんなのお前の事好きな女の子としか考えられん!」
でも拓馬は無頓着で、
「は?そんな事あるかよあの子に限って」
と言って、全然俺の言葉に耳を傾けようとしてくれなかったのだ。
俺からしたら、いくら先約であろうとそこは後輩ちゃんじゃなくて里奈ちゃんとのデートを優先すべきだろ!って感じだ。なに里奈ちゃんからの誘いを断ってんだよ。
だってコイツ、自分で気付いてないっぽいけど多分、俺の推理が正しければ、
拓馬は里奈ちゃんの事が好きなはずだ。
だから俺は今、小さい声でコイツに言ってやった。
「お前、里奈ちゃんの事が好きなんじゃねーの?」
すると拓馬は何を言うかと思えば、いきなり砕けるようにして笑って、
「まさか!馬鹿じゃねぇの?そんな訳」
と言ったのだ。
え?好きじゃねぇの?
もしかして、自分の気持ちに気付いてないだけ?
それともまさか、本命は後輩の方?
いや、それともマジで拓馬、里奈ちゃんの事を恋愛対象として見てない感じ?
親友ながら、その辺りは全然読めなかった。
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24日のクリスマスイヴの放課後を和彩達と過ごし、その夜に家族でクリスマスパーティーをして楽しい時間を過ごした私。
そして25日。バイトが終わってロッカールームで着替えていると、バイト先の友達にこう声を掛けられた。
「今日気合い入ってんね!彼氏?」
「かかかか!?彼氏ちゃいまっせ!」
「なんで関西弁!?」
この日はナチュラルメイクで髪型をポニーテールに。ベージュのロングコートの下にパステルピンクのニットワンピを着て、ブーツを合わせた。健吾と出かけるにしてはちょっとオシャレな服装にし過ぎたかな?
健吾とは15時に駅で待ち合わせして、そこからボーリングに行き、カラオケもした。
そして夜のディナーは……
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編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。