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そして土曜日を迎え、私は恭平くんと一緒にカラオケにやって来た。今日は私の家の最寄り駅の方まで恭平くんが来てくれているのだ。
恭平くんは歌が上手いので、なんだか聴き惚れてしまう。
……そういえば、鈴木くんとカラオケには来た事なかったな。
って、また鈴木くんのこと思い出して。
ホント、嫌になる。
どうやったら鈴木くんの事を忘れられるんだろう。
あぁ、私は本当に失礼な奴だ。私は今恭平くんとカラオケで楽しんでいる最中なんだから、今は恭平くんの事だけを考えていれば良いんだ。
しばらくして、
「里奈ちゃん、ちょっとトイレ行ってくるね」
と言って、一度恭平くんが部屋を退出した。恭平くんはスマホを持って行かずに部屋を出たので、彼のスマホは今、テーブルの上にある。私がデンモクで次に歌う曲を選んでいる時にこんな事が起きた。
テーブルの上の恭平くんのスマホの画面が光った。それが視界に入ってきたので、私は無意識にスマホの画面をチラッと見てしまった。
スマホが光った理由、それは、
鈴木くんからのLINEが届いたからだったのだ。
本当は文なんて見ちゃいけないのを分かってるのに、私はつい気になって見てしまった。
そこにはこんな事が書かれていた。
「お前、ドジ田からいつの間に下の名前で呼ばれてんの?」
私絡みの内容だった事に驚いた私は、ふいに口を押えて息を飲んだ。
鈴木くんが、私と恭平くんの関係を気にしてるっていう風にも取れるこの文。
それは私の自惚れかもしれないけど、ちょっと嬉しかった。
鈴木くんが恭平くんにLINEを送ってきたのは今。私はデンモクをテーブルに置き、自分のスマホをカバンから出した。
今、私が鈴木くんにLINEを送ったら、鈴木くんはすぐに見て私にLINEの返事をくれるかな?という、甘い考えが頭を過ぎってしまったのだ。
「鈴木くん……」
でも、送ったのに返って来ない可能性だって充分にあった。送るか送らないかの判断に迷う私。それに早くしないと恭平くんが帰って来てしまう。送るか送らないか、今決めないと。
一先ず私は、鈴木くんのLINEのトーク画面を開いた。でも勇気が出せず、これ以上は指を動かせなかった。その後、ドアの前に人影が。
恭平くんが帰って来たのだ。なので私は慌ててスマホをガウチョのポケットに入れては、急いでデンモクに持ち替えた。
「…な、何歌おうかな……」
少しの間、その動揺が取れることはなかった。
それから少しして、今度は私がトイレに行くと言って退出した時に、ガウチョのポケットからスマホを取り出し、再度鈴木くんのLINEのトーク画面とにらめっこをした。
最終的に私が下した結論はこれだ。
「鈴木くん、こんにちは!最近話せてなかったね……。今度、久しぶりにもち子ちゃんに会いたいんだけど、会いに行っても良いかな?」
というLINEを送信したのだ。
鈴木くんからの返事、来るかなぁ?
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アンケート
鈴木からのLINEの返事は
来ると思う!
71%
来ないと思う!
29%
投票数: 17票
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。