「良い」
「ん?」
「食事代くらい今日は俺が払う」
と言ってくれた。
「え……」
「誕生日のリベンジだからな。そんくらいはする」
鈴木くんのそんなスマートな行動に、キュンとしてしまった。この人に爽やかさと社交性を足したら、実はめちゃくちゃスーパー好青年になるんじゃない?なんて思ってしまった。
「鈴木くん、ごちそうさまです」
「あぁ」
早速自分のことを話す作戦の効果があったのだろうか。さっきから鈴木くんの表情が柔らかい。
ねぇ鈴木くん、私にもっとそうやって、知らない鈴木くんをたくさん見せてよ。
素敵な鈴木くんをたくさん見せてよ。
「鈴木くん……あの……また、聞いてもらいたいお願いがあるの」
「なんだ?」
和彩達からの教え、“あからさま戦法”を決行だ。
私は鈴木くんの袖を掴み、
「手を……繋ぎたいです……」
と言った。
恥ずかしくて、鈴木くんの顔が見れない。
鈴木くんは今、どんな顔をしているんだろう。さすがに緊張し過ぎて見れない。
鈴木くんは、
「え……バカ。さっきから妙な頼みばっかりしてきやがって」
と言う。
「ごめんね。でも……私にとって今日は特別な日なの。鈴木くんにこんな風にデートに付き合ってもらうなんて奇跡だから。一生に一度だと思ってどうか、お願いします」
私はそう伝えて鈴木くんに頭を下げた。
「それか、…えっと…これは……誕生日会のに最後の方しか来れなかったバチが当たったんだと思えば良いから……」
何でもかんでもそれを口実に出してこんなことをしている内に、自分のことがだんだんと汚く思えてきた。
こんな汚い奴の手なんて鈴木くんは握ってくれないよね。
「……バチだなんて誰が思うか」
え…?
なんと、あの鈴木くんが私の手を願い通り本当に握ってくれたのだ。
「お前の手、ちっさ」
「へ……!?」
上を見上げると、鈴木くんは男らしい顔を私に向けていた。そして鈴木くんは僅かに私に微笑んでこんな事を言ってくれた。
「可愛い手してんのな」
それを聞いた私は、ドキドキし過ぎて心臓が破裂してしまいそうになった。
「鈴木くん……良いの?これも鈴木くんがさっき嫌がった、彼氏とやるような事……だよ?」
と念の為尋ねると、思いもしない返事が来た。
「今日くらい……おかしくなってやっても良いかなって思えただけだよ」
そう話す鈴木くんの目はとても優しく、温かいものだった。
鈴木くん、どうしちゃったんだろう?って思うくらいかっこよくて、つい鈴木くんと両想いになれたという、そんな勝手な錯覚を起こしてしまった。
NEXT▷▶︎▷▶︎第12話 「トラウマ」
いかがでしたか!?
最初は辛鈴木でしたけど、
最後の方は甘鈴木になりました(*ฅ́˘ฅ̀*)♡
ちょっとやり過ぎましたかね?←
今回もご覧頂きありがとうございます!
感想もお待ちしております✨
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!