第13話

第5話「初恋と動物園」その1
47
2021/05/06 08:21
夏休みに入ってからというもの、私は夏休み序盤にとっとと宿題を終わらせ、適度にバイトを入れてお小遣いを稼いだ。ちなみに私のバイト先は有名チェーン店であるアイスクリーム屋。なのでシフト中は特に大忙しだった。
その中で和彩達とプールや夏祭りに行ったり、家族でキャンプに行ったり、静岡のおじいちゃんおばあちゃんの家に遊びに行ったりと、夏を大満喫していた。

でも、8月の末になって、とある事に気が付いた。


私、鈴木くんに会ってない!!!!


何をやってるんだ私。あんなに日にちがあったのに、なんで鈴木くんを誘ってどこか出かけようって案が浮かばなかったんだよ。アホか。本当にアホなのか!?私は1人、部屋のベッドに蹲り、撃沈していた。

鈴木くんと距離を縮められるチャンスだったのかもしれないのに。

とはいえ、あと1週間残ってる。1回でも良い。鈴木くんとどこかに一緒に遊びに行きたい!いや、日程的に合わなかったとしても、1分でも良いから鈴木くんを拝みたい……。
そう思って私はスマホでLINEを開き、鈴木くんに連絡を入れようとした……が、






そもそも連絡先すら交換してねぇぇぇ!!!!!!!!!!







なので私は、窪塚くんに電話を入れた。でも窪塚くんは生憎すぐに電話に出ることは無く、結局折り返しが来たのは夜の8時。やっとそこで電話する事が出来た。

「って事なんだけどどうしよう窪塚くん。助けて!私が鈴木くんと会えるようになんとかしてもらえないかなぁ!」

と泣き付く私。そんな私に窪塚くんは、

「えぇ!そんな!普通にバイト先覗きに行ったりすれば良かったのに!」

「いやぁ、なんか嫌がりそうじゃん?お願い窪塚くん!」

という事で、窪塚くんの所属するバレー部がお休みの日に合わせて、鈴木くんのバイト先に一緒に顔を出しに行ってもらうことになった。ちなみに今日がシフトである事は本人から確認済だそうだ。

「ごめんね、付き合わせて」

「良いよ良いよ!俺もごめんね。俺から応援するとか言っておきながら」

「ううん。部活で忙しかった中むしろ時間作ってくれてありがとう」


それから鈴木くんの働くペットショップのコーナーに移動し、まずは自然とお客さんを装って、ワンちゃん達のいるガラスケースを見て癒されていた。可愛いなぁ。なんて思って普通に満喫していると、気付けば窪塚くんが鈴木くんの事を呼んできてくれていて……


「おい」


横を見ると、鈴木くんの姿が。びっくりしてウワッ!と声を上げてしまった私は、その後気を取り直して、

「すすすす、鈴木くん!お疲れ様です」

と言って鈴木くんに深々と頭を下げた。

「恭平、なんでまたコイツ連れて来てんだ。今日はもう休憩時間終わったからな」

「えー!終わったんかい!」

「クソッ。だから今朝シフトかどうか聞いてきたのか」

鈴木くんは顔を顰めていた。やっぱり邪魔だったよね。窪塚くんは怖気付いている私の背中をポンと叩き、口パクで何かを訴えてきた。多分、デートに誘えと言ってるんだと思う。この空気で誘うなんて無理だ。それを見かねた窪塚くんは、

「なんか、拓馬に話があるみたいよ?ね?里奈ちゃん!」

と言って華やかな笑顔を浮かべた。

「えええ!?」

出た!!窪塚くんのスパルタハイペースモード!!やってくれたな……と思ったけど、彼は私のことを応援してくれている強い味方だ。そんな風に思ったりしちゃいけない。窪塚くんはその後、

「あ、俺さぁ、2階の100均に用があるから、話し終わったら2階来て!じゃあ!」

と言って、にこやかにその場から去って行ってしまった。マジか……2人きりかよ……

2人きりになって、たった3秒沈黙が生まれただけなのに鈴木くんは、

「用がないなら仕事に戻る。じゃあ」

と言って私に背を向けた。いかん!これじゃ窪塚くんのせっかくの行為が台無しになる!

「待って鈴木くん」

そう思った私は慌てて鈴木くんを引き止めた。

「なんだ」

くるりと私の方を向いてくれた鈴木くん。

「えっと……その……」

鈴木くんは鬼の形相で私の事を睨んできた。こっっわ。ホント、なんでこんな人を好きになったんだろう。つくづく自分の目を疑うわ。私は深呼吸をして、鈴木くんにこう伝えた。

「連絡先……教えて!」

「は?」

「えっと…鈴木くんとちょっと……どっか遊びに行きたいなぁぁ……とか思ったりして。…ねぇ?それでちょっとあのー、連絡先を交換してもらえたりしないかなぁ?って……」

たどたどしい伝え方になってしまったけど、我ながら頑張った方だと思う。でも鈴木くんは、

「仕事中だ。スマホなんて今は持ってない」

と言って、そのまま仕事に戻ろうとした。

「え、鈴木くん……」

やっぱりケチだこの人!この冷酷無愛想クソ般若め!!いっそもうコイツを追うことなんてやめてしまおう。こんなに報われない恋をしててももう無駄だ。なんだか嫌気がさしてしまった私は、鈴木くんを背にして、とぼとぼと歩き出した。でも、


NEXT▷▶︎▷▶︎その2

プリ小説オーディオドラマ