第26話

第8話 その3
41
2021/05/10 12:25
その時だった。


いきなりバタバタと、1年生の男子4人くらいが階段を駆け下りてきた。誰かを探してる様子だった。

そしてこんな声が聞こえる。

「里奈先輩ってあそこにいる人?」

と。

へ?私に用ですか?よく見てみるとその4人組の中の一人に健吾がいたのだ。

「健吾!?」

なので私から健吾に声をかけた。すると健吾よりも先に、他の3人が私に駆け寄ってきた。

「え、なになになになに!?なんですか!?」

私は突発的に両手を上に挙げた。鈴木くんも窪塚くんも、この事態に眉をひそめていた。

「里奈先輩っすよね?健吾と仲の良い」

と、一人の男子生徒に話しかけられた私。

「ま、まぁ…」

「ちょ、お前らマジで良いって……」

健吾は他の3人と違った様子だった。なんだか3人のことを止めようとしているみたいだ。

「何?一旦話聞くよ?」

とりあえず、なんだか緊急事態っぽい感じだったので、話を聞いてあげることにした。

「ありがとうございます!すみません、明日、同中だったこいつの元カノが文化祭に来るんです」


「え!?」


「そいつ、健吾に彼女いるって適当に嘘ついても全然聞く耳持たないくらい健吾に未練タラタラなんす。明日、俺らの友達と一緒に来る事になったそうで、さっき同中のその友達から連絡が入ったんです。なんか、意地でも健吾に会うって言ってるみたいですよ」

いつもは健吾が部活で帰りが遅かったりする為、元カノに追いかけ回される事は特になかったそうだが、文化祭なら健吾に会えると踏んだ元カノが、同中の友達を押し切ったんだそうだ。ちなみに健吾はその元カノの連絡をスルーしているとかなんとか……。
2人がどんな別れ方をしたのかは知らないけど、結構厄介そうな子に好かれてしまったな健吾。

「ほぉ、それで?」

そして本題へ。健吾の友達は、こんな事をお願いしてきた。



「里奈先輩、明日こいつの彼女役をやってもらえませんか!?」




「は!?」



私はその言葉に目を丸くした。

「彼女がいる所を見せつければ、さすがにもう諦めてくれると思うんですよね。それに多分、年上相手なら猫かぶりするんで余計に大丈夫な気がするんすよ!」

まさかの提案に私は言葉を失った。健吾の彼女役!?って事は、とりあえずただ健吾の横に立ってれば盾替わりになるって事?私は自分がこの話を飲んだ時に何をする事になるのかを考え、心の中で焦っていた。

「里奈先輩、お願いします!」

と健吾の友達。他の2人も頭を下げてきた。健吾はその子たちに向かって、

「ねぇ、マジでやめてってば。俺が1人で何とかするから里奈ちゃん巻き込まないで」

と伝えていた。本人が私に頼むつもりがないのならと思った私は一先ず、

「うーん、私もこの2人と回る予定があったしなぁ」

と返す事にした。

しかし、ここに来てまさかの人物が口を開けた。


「やってやれば良いだろ」



その人物とは鈴木くんだ。


「え!?」


しかも鈴木くんからは、

「フリするだけじゃないか。その子と仲良いんだったら、それくらいやってやれよケチ女」

という言葉を浴びせられた。

鈴木くんにだけは、そんな事言われたくなかった。だってそれってつまり、私が健吾の彼女役になったとしても、鈴木くんからしたらどうってことないって言う意味でしょう?

だからそんな言葉があっさり言えるんだ。

私は鈴木くんに腹を立て、


「黙れクソ般若!!!!ただ迷ってただけだろがい!!!!健吾、私やるよ!彼女役!」


と言い放った。

「え!?里奈ちゃん!?無理しなくていいよ!?」

「でも健吾、困ってるんでしょ?それならやる!」

私がそう答えた事で、健吾の友達3人からお礼を言われた。

「良かったな健吾!あとは上手く作戦を立てよう」

健吾は友達から肩を叩かれそう声を掛けられていたが、なんだか浮かない顔をしていた。


〈アホ…!お前ら、よりによってこの先輩の前でこんな話すんなよ……。鈴木先輩は里奈ちゃんの好きな人だって言うのに〉


事が落ち着き健吾達が戻って行った後、

「り…里奈ちゃん、なんだか大変な事になったね。とりあえず、あの子達から声掛かるのが明日の何時頃になるのか知らないけど、それ以外の時間で俺達と回ろうね」

と窪塚くんが私にそう言ってくれた。

「あ…ありがとう……」

肝心な鈴木くんはというと、

「まぁ、精々頑張れ」

と、嫌味ったらしい顔でそう言ってきた。なんでそういう事しか言えないの!?今にこの般若の事を殴り倒したい気分だった。

「何その言い方!このクソ般若!!!!!!!!!!」

「うるせぇ金目鯛」

「ぶっ飛ばすぞ!!!!」

もう…なんでこうなっちゃうの……?


そんなこんなで終えた文化祭1日目。明日がもう不安でしかなかった。





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あのー、我ながら鈴木、酷くないすか?←
全然女子の気持ちを分かってないですよね(。ŏ﹏ŏ)
今回もご覧頂きありがとうございました!

次回もお楽しみに✨感想もお待ちしております🥰

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