「わぁ!キレイ!!」
「へへへ!どうせクリスマスに食事するならこういう所の方が良くねー?」
なんと健吾が、夜景を楽しめるカフェ&ダイニングのお店を予約しておいてくれたのだ。
なんて気が利く子なんだろう。女子の好みをよく分かっているじゃないか!
でも、私はこんな時でも鈴木くんの事が頭に出てきてしまった。
こんな素敵なお店で、鈴木くんと一緒に食事して「メリークリスマス」って笑顔で言われたいなっていう想像をしてしまったのだ。
そういえば窪塚くんがこの間ポロッとこんなことを言っていた。鈴木くん、バイトの後に先約がどーのって話だったよね。
まさかデートとかじゃ……ないよね??
まぁ、鈴木くんに限ってそんな事はないか。
鈴木くん、今誰とどこにいるんだろう。
鈴木くん、会いたい。
食事を終えた私達は、お店の入っていた建物の1階広場にクリスマスツリーがあるという事だったので、それを見に行った。
そのクリスマスツリーは大きく、真っ白で美しいビジュアルをしていた。
周りのイルミネーションと合わさってとても綺麗だ。それに、良い感じにチラホラと雪が降ってきた。だから余計に綺麗な情景となったのだ。
「めっちゃデカイねツリー!」
「ね。それに凄くキレイ!」
こんな素敵なツリー、鈴木くんにも見せてあげたいな。2人でこれを眺めて、
「里奈、キレイだね」
って声をかけてもらいたいな。
このツリーの下で、鈴木くんから
「好きだよ。里奈」
って言ってもらって、そのまま鈴木くんとキスがしたいな。
なんて、私はいつまでこんな妄想してるんだろう。いくら妄想したって、鈴木くんがここに現れる事なんて無いのに。
「里奈ちゃん?」
しまった、そんな考え事をしながら呆然としていたら、健吾に心配されてしまった。
「里奈ちゃん、大丈夫?」
「へっ?う、うん!大丈夫大丈夫!」
「…ほんと?なんか泣きそうな顔してない?」
「いやいやいやいや!してないよ!」
すると健吾は、
「もしかして、鈴木先輩のこと考えてた?」
と言う。さすが健吾だな。私の考えてることなんてすぐ分かっちゃうんだ。
健吾は私の事をこんなにも分かってくれるのに、鈴木くんはそうじゃないんだよなぁ……。なんでこうも違うんだろう。
目を閉じたら、勝手に涙が流れた。
私は首を縦に振り、
「鈴木くんにも……このツリーを見せたかったなって考えてただけだよ」
と言った。そしたら、まさかの出来事が起きた。
次の瞬間、私の視界は健吾でいっぱいになった。
唇に感触が。
これが、私のファーストキスになった。
「ごめん、里奈ちゃん。俺、里奈ちゃんが好きだよ」
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編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!