「鈴木くん、こんにちは!最近話せてなかったね……。今度、久しぶりにもち子ちゃんに会いたいんだけど、会いに行っても良いかな?」
このLINEを送ってからというもの、一向に返事は来ず。結果的に既読スルーに終わった。
それを希美と琴葉に話したところ、
「よく勇気出してLINEしたね!」
と逆に褒めてもらった。
「般若に会いに行って見れば?」
と希美。でもそこまでしたら鈴木くんにウザがられそうだ。帰れなんて言われたらショックだもん。それに、私のLINEを既読スルー。ある意味これが私への返事みたいなもんだ。私なんて鈴木くんにとってはそんな存在に過ぎないって事なのだ。
「いや……そこまでは出来ないよ」
その日の放課後、こんな事が起きた。なんと、鈴木くんがうちの教室にやってきたのだ。
「先生、プリントです」
帰りのHRを終え、今は掃除の時間。職員室に行こうとしたうちの担任の先生に提出物のプリントを渡しに来ていた。そっか、うちの先生、偶数組の現社を担当してるんだっけか。
鈴木くんが教室を出る時、私達はたまたま目が合ってしまった。
ちなみにこの場には恭平くんはいない。既に彼は部活へ行った後だった。鈴木くんは慌てて私から目を逸らし、教室を出て行った。
しかし、私の体は勝手に動き出し、気付けば箒を持ったまま追いかけていた。
「鈴木くん!」
鈴木くんはいつもの強面な表情で振り返ってきた。この距離で話すのは久しぶりだな。
私は緊張しつつも、
「LINE……見てくれた?」
と恐る恐る聞いた。
すると鈴木くんは、
「……すまん、返してなかったか」
と言った。意外にも普通の返しをしてくれた。
「ううん。別に、急ぎのLINEじゃなかったから大丈夫だよ」
と言った。
「……そうか」
鈴木くんはそう言うと私に背を向けて再び廊下を歩き出してしまった。
ほんの少しだけど、話せたことが信じられないくらい嬉しかった。ダメだ、どうしたって無理だ。
鈴木くんの事、全然忘れられないよ。
その時、鈴木くんの動きがピタッと止まった。
「……来るか?家」
なんと、今度の金曜日に鈴木くんの家に遊びに行く事になったのだ。
仲の良い女子友達にはこの事は話したが、どうも何故かこの事は恭平くんには話す気になれなかった。
そして迎えた金曜日、放課後家に帰って支度をして、鈴木くんの家に向かった。
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編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。