第44話

第14話「里奈の言葉」その1
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2021/05/14 08:03
鈴木くんと私は昨日、腹を割って話す事でお互いに少し距離を近付ける事が出来た。
でも、きっと両想いになるには程遠い。
私はもっと鈴木くんと仲良くなりたくて、今日はお互いにバイトも無かったので、鈴木くんに私のバイト先のアイスクリーム屋さんに食べに来てもらいたくて、そこに誘った。

「お前の作るアイスじゃないならきっと美味いんだろうな」

「は?どういう意味?」

「ん?ドジ田の作るアイスは溶けて不味そうなんだろうなって意味だよ」

鈴木くんはすぐそうやって私のことをからかってくる。ホントこの人は私の事をなんだと思ってんだ。

すると、どこかでバイブ音が鳴るのが聞こえた。

「ん?鈴木くん、スマホ鳴ってない?」

「え?あぁ、別にいいよ」

鈴木くんは誰からかの電話も見ずにそう言い切ったもんだから、心配になった。

「いや、確認しなよ」

なんて話していたら、校門でとある人物に出くわした。

「たーーくーーまーー!!!!!!!!」

この声は!



「ゲッ!諒子!」



そう、諒子さんだ。

「あ!こんにちは!」

私はすぐに頭を下げ、挨拶をした。

「こんにちは。里奈ちゃんだっけ」

「はい!覚えててくださって光栄です!」

諒子さんは私に笑顔を向けた後、次に鈴木くんに鬼の形相を向けた。

「おい拓馬てめぇ、なんで電話出ないんだよ。スルーしてんじゃねぇよ。今の電話も本当は気付いてんだろ!?」

は!?鈴木くん、諒子さんからの電話をスルーしてるって?めちゃくちゃ失礼じゃん。私は眉間に皺を寄せた。

「どうせ佐渡のばあちゃんの事だろ?もう良いから」

「良くない!あんた絶対誤解してるから!お願いだから一緒にお見舞い行こうよ!」

おばあちゃんと言えば、窪塚くんから聞いた話だと鈴木くんに対して、「あいつが茜を殺した」って話してたって言う人だよね?でも今、諒子さんは“誤解してる”と言った。

それに何?お見舞いって事は入院しているの??

そんな事を考えている私の横で、諒子さんと鈴木くんは長らく言い合いをしていた。そこで私からこう切り込んだ。

「鈴木くんのおばあちゃん、入院してるんですか?」

諒子さんは腕を組んで、

「そうなの。虚血性大腸炎っていう病気みたい。酷い腹痛を訴えて動けなくなって、そのまま病院に運ばれたらしいの」

と答えてくれた。

「どうせ大した事ないやつなんじゃねぇのか?くだらん」

鈴木くんは嫌味っぽくそう返すと、諒子さんは鈴木くんに反論を開始した。

「お前なぁ、おばあちゃんもう70代後半だよ?若い人がなるのと違うんだから!どうするのこのまま良くならなかったら!」

「知らん。考えすぎだろ」


諒子さんの言うように、鈴木くんがおばあちゃんに対して何か誤解をしているとして、それでいておばあちゃんは今入院していて、このまま亡くなってしまう可能性も0じゃないっていう状況なんだったら、

誤解を解くのなら今しかなくない!?

私は鈴木くんと諒子さんの間に割って入って鈴木くんの胸ぐらを掴んだ。


「鈴木くん!おばあちゃんに会いに行った方が良いよ!」

「……は?」

「会っておかないと絶対後悔するよ!何なら一緒に行っても良いよ!」

「はああ!?」

私も私で、昔に会えないままおばあちゃんが亡くなったという経験があった。なので鈴木くんには私と同じような後悔をしてほしくなかったのだ。

「え!里奈ちゃん着いてきてくれるの!?」

と諒子さん。

「おまっ……諒子!」

「はい!一緒に行っても大丈夫でしたら是非!」

「わぁ、心強い!コイツ頑固だから里奈ちゃんみたいな子がいたら助かるよ!おい、拓馬。お前、里奈ちゃんはこう言ってくれてるぞ?」

この状況に鈴木くんは顔を片手で覆い、

「あークソ!」

と呟いては大きなため息をついていた。

「ドジ田、だいたいお前どこまで聞いてんだ」

「おばあちゃんの所も全部聞いてる!」

「チッ。恭平の奴。なんでもコイツに話やがって」

という一悶着があり、私達は後日3人で佐渡ヶ島に行く事になった。日にちは早い方が良いので、土日と次の勤労感謝の日の間にめちゃくちゃいいタイミングでうちの高校の開校記念日によるお休みの日があった。それによって4連休になる箇所があった為、そこで行く事になった。

もち子ちゃんの事は、1階に住む鈴木くんのマンションの管理人である、ペットショップの元店長夫婦が面倒を見てくれることに。

とはいえ、全然鈴木くんは乗る気じゃない。

「まさか……お前が本当に着いてくるとは」

鈴木くんは道中ずっと頭を抱えていた。ちなみに窪塚くんもこの事は知っていて、

「良いなー。俺も旅行着いてって良い?」

と聞いてきた。

鈴木くんは、

「旅行じゃねぇから!」

と、そんな窪塚くんにピシャリと言い返していた。でも窪塚くんは近々部活の大会がある事もあって、休む訳には行かない為今回は同行しない事に。
私や鈴木くんはバイトの休みを上手いこと調整して予定を空けたのだ。


新幹線や高速バス、フェリーを使って佐渡ヶ島までやって来た。移動時間は6時間くらいかかった。

おばあちゃんの家に着くと、そこには親戚の方が来ていた。



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