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▷就職おめでとう。少し寂しいけど、頑張ってね。
実家の岩手を出て新幹線で東京に向かっている途中、お母さんからメールが来た。
小さい頃から一人が苦手な私を心配して、会社近くのシェアハウスを必死に探してくれたお母さんの姿を思い出す。
重いまぶたを押し上げて、窓際に映るちっぽけな夜景を見上げる。
ここから、私の新しい生活が始まるんだ。
期待に胸を膨らませ、眠りに落ちた。
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がらがらとスーツケースを引っ張りながら、私はその建物を見上げる。
見た目は長方形の建物で、二階建てだった。
にしても、一階がやたらと広い。
窓も多い。
私はドアを開けて、なかにはいる。
そこには、殺風景な部屋に丸いテーブルと椅子が置かれていた。
私は、管理人さんが住んでいる101号室をノックしてみた。
ドアの向こうから、気の抜けた返事が返ってきた。
思っていたより、若い管理人さんなんだな、と声で判断する。
がちゃ
いきなりタメで話しかけてきたおそ松、という人物を私はゆっくりと見つめる。
イケメン……そして、イケボ……。こんな人達と私過ごすの?
恥ずかしいやら、嬉しいやら…。
そういうと、おそ松は私に紙切れを差し出した。
松野シェアハウスのルール
・お風呂は午後5時~11時までに入ること。(11時半から清掃開始)
・12時には消灯すること。(12時に管理人が見回り)
※12月31日は例外
住民表
101号室…管理人 【 松野おそ松 】
102号室…清掃者 【 松野カラ松 】
103号室…家賃管理者【 松野チョロ松 】
104号室…仕事無 【 】
105号室…仕事無 【 松野一松 】
106号室…仕事無 【 松野十四松 】
107号室…仕事無 【 松野トド松 】
全部…同じ名字…?
―六つ…子…!?
いきなり出てきた馴染みのない言葉に、私は驚きを隠せなかった。
がちゃん
(そっくりだから、見分けられるか不安だけどね)
私はドキドキする胸を抑えながら、今は誰もいない他の部屋を見渡した。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。