居ない。
梅原さん。
梅原さん、梅原さん、梅原さん。
さっきまでここに居た。
確かにいたんだ。
絶対に。
ごめんなさい。
私。
私…
いつも我儘で、梅原さんの事考えなくてごめんなさい。いつも嫌がっていること無理矢理やらせてごめんなさい。優しくしてもらってるのに気づけなくてごめんなさい。
いつも私が梅原さんにどれだけ甘えているのか。
失ったとき、こんなに辛いなんて知らなかったし
貴方のこと知らなきゃ良かった、と心の奥深くで思ってしまっているのだ。
もし梅原さんのことを知れなかったら。
わたしは今幸せだったのだろうか
色々考えてしまい辛くなる。
涙が溢れ出してくる。
拭いても__
拭いても___
パッと時計を見る
もうこんな時間か、
ラジオまでもう少しだった。
あなた「行かなきゃ……」
撮影場までおぼつかない足取りで向かう
やり遂げなければ
例え今私がどれだけ辛かろうとも
それは"私情"。皆が求める光村あなたでは無い。
そう自分に言い聞かせ、その場を後にした
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!