プリ小説

第11話

11*
修学旅行最終日。
世良くんに話しかけようとしたが、一歩手前のところで日野さんに先を越された。

「亮くーん、今日も一緒に回ろうね!」

昨日までと同じように、世良くんに必要以上にくっつく日野さん。

世良くんは私の彼氏になったのに。

けれど、やはり度胸がなくて口に出せず、俯く。

「ごめん日野さん」

すると、近くに誰かの温度を感じた。

「もう日野さんとは回れない。彼女がいるから」

いつのまにか隣に立っているのは、世良くん。
顔を見上げるとにっこり笑ってくれて、トクンと胸が高鳴った。

「……そう。わかった」

冷静な口調で答え、私たちから歩いて遠ざかっていく日野さん。思いのほかあっさりした態度に拍子抜けしてしまった。

ぼんやりその背を見送っていて、私はハッと気付いた。

「待って!」

日野さんへ駆け寄り、立ち止まってくれた日野さんときちんと向き合って謝罪する。

「……ごめんね、日野さん。日野さんは私に誠実でいてくれたのに、私……昨日、日野さんから世良くんを奪うようなことした」

世良くんを引っ張って走ってた時は夢中だったから気付かなかったけど、私は世良くんに告白しようとしてた日野さんの邪魔をしただけじゃなくて、告白する機会も奪って世良くんと付き合ってしまったんだ。
申し訳なさに顔が下を向く。

静寂の後、日野さんはぽつりと呟いた。

「……誠実なんかじゃないよ」
「え?」
「楪さんは亮くんを諦めればいいって思って、亮くんと親密に見えるように無理やり腕組んでたし、ホテルでもキツいことばっか言ったし、亮くんのこと奪う気しかなかった」
「……そうなの!?」

ということは全部わざと……。えぇ……。素でやってたんじゃなかったんだ。
でも、やっぱり行動力と強い心があることには変わりないから、すごいなぁと思った。

「楪さんって、馬鹿なほどいい子なんだね」
「……あ、ありがとう」
「ん」

褒められたのか貶されたのか分からなかったのでとりあえずお礼を言うと、日野さんは呆れ笑いをした。

あ……初めて私に笑ってくれた。

「じゃあ」
「うん!じゃあね!」

嬉しさに声を跳ねさせながら手を振る。
日野さんはまた少し笑ってから、歩き去っていった。

「何話してたの?」

背後で響いた優しい声に、ドキ、と胸が鳴る。
私は世良くんを振り返って言った。

「秘密」

私の笑顔から、世良くんは色々察したようだった。

「そっか」
「おいお前らー!置いてくぞー」
「ごめん、すぐ行くよ!」

遠くから瀬戸くんの大声が飛んできて、世良くんは焦ったように声を張り上げて返していた。
そして私を見る。普通に行くのかと思いきや、目の前に手を差し出された。
世良くんがふわりと柔らかく笑う。

「行こうか」

――本当に、恋人同士になったんだ。
私は緊張しつつ世良くんの手の上に自分のそれを重ねた。そうすると、世良くんがぎゅっと握って繋いでくれる。
控えめだけど、決して離さないような世良くんの気持ちが伝わってきて。

「……行こ!」

世良くんへ、『大好き』を込めて笑った。

くすっと小さく笑い合い、繋いだ手の温かさを感じながら、“恋人”の私たちは一歩目を踏み出した。

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さとう
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