プリ小説

第10話

10*
走り始めてから足を止めるまでの数分で、辺りはすっかり暗くなっていた。
真っ暗なシンデレラ城の前、私と世良くんは肩で息をする。

「ごめ、んね世良くん……。急に、引っ張ってきちゃって」
「いいよ……。気にしてない」
「そっか、ありがとう……」
「うん……」

会話が途切れ、私たちの間に沈黙が流れる。

長く続いたそれを破ったのは、世良くんだった。

「あのさ楪さん。聞きたいことがあるんだけど」
「? 何?」
「楪さんって、瀬戸のこと好きなの?」

数秒間、思考が停止した。

「っえ……!?なんで……」
「昨日も今日も、瀬戸と仲良さそうにしてたから。まぁ俺が日野さんと話してたからっていうのもあるかもしれないけど……普段も、俺より瀬戸との方がよく話してる」
「それは、みなみちゃんと瀬戸くんが仲良いからで……私はついでみたいなものだよ」
「最初はそうだったとしても、時間が経てば分からないよ。瀬戸を好きになることは十分ありえる。……逆も、ね」

逆?っていうのは、瀬戸くんが私を好きになること、かな。
そんなのありえない、けど……世良くん、そんなこと考えてたんだ。

「瀬戸が好きなら今からここに呼ぶよ。俺はもちろん退散する」

ドク、と心臓が歪な音を立てた。
違う。違うの。行かないで。
中学生の時から想ってた。私の好きな人は、大好きな男の子は……。

「……瀬戸くんじゃないよ」

動け、唇。

怖くても、言うんだ私!ちゃんと声に出すんだ……!

今だけでいいから、頑張って……え!!


「私が好きなのは――せ、らくんだから……!」


大事なところでつっかえてしまい、自己嫌悪に陥りかけた、その時。

右手にある巨大なシンデレラ城がパアッと明るく輝いた。

「……!」

6時になったようだ。とても綺麗にライトアップされたシンデレラ城に、ついさっき自分が告白したことも忘れて見入る。

「……綺麗……」
「楪さん」

隣の世良くんを見る。
ライトアップの光に照らされる世良くんの顔が、優しい微笑になった。

「返事、今していいかな」
「……うん」

視線を下に落として答える。
世良くん、いつも通りだ。この感じでサラッとフラれるのかな。

偶然とはいえライトアップの瞬間に告白できたんだし、ジンクスが効いてくれるといいけど……。


「俺も楪さんのことが好きです。付き合ってください」


「……!?!?」

びっくりしすぎて逆に声が出なかった。世良くんが「静かに驚くね」とくすくす笑いながら言った。
私は混乱しながら口を開いた。

「だ、だって、え!?本当に上手くいくなんて……」
「あぁ、ジンクスのこと?タイミングばっちりだったよね」
「知ってたの……!?」
「まぁ……俺それに頼ろうとしてたし」

世良くんは少し恥ずかしそうな表情を浮かべた。
頼ろうとしてた……?

「俺ね、楪さんと初めて同じクラスになった時から、楪さんのこと好きだったんだ」

ぶわっと顔に熱が集まってくる。
それ……私と一緒……!

「私も!私も、ずっと世良くんが好きで……!」
「……本当?」

世良くんが顔を赤くした。
私も照れてしまって、二人でしばらく赤面する。

そういえば、とても大切なことを言っていなかった。

「世良くん。その……付き合うの、OK、です」

「――ありがとう。よろしくね」
「こちらこそ、よろしくっね」

変に噛んでしまって落ち込むと、世良くんがくすっと笑った。

「どんまい」

頭をポンポンしてくれる世良くんは、すごく嬉しそうな笑顔だった。

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さとう
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