木曜日の7時間目は、LHR。
担任の指示で、修学旅行の班決めをすることとなった。
「みなみちゃん、一緒になろう?」
「もち!」
ニコッと笑ってから、みなみちゃんは私に言った。
「あのさあなた、班の人数って4人じゃん?」
「うん」
「だから、あと二人は瀬戸と世良を誘っといたんだけど、いい?」
「え!?」
思わず大きい声を出してしまい、慌てて下を向く。
しかし、興奮は収まらない。
世良くん!?と一緒に修学旅行……!?
妄想が次々脳内に浮かぶ。私は急いで頭を振り、小声でみなみちゃんに囁いた。
「む、無理だよ!私、今日まで一回も行動起こせなかったんだよ!?二人でどこか行ったことないし、委員会なら一学期間だけ一緒になったことあるけど……それだけ!挨拶とか軽い会話しかしてないのに、そんな、いきなり修学旅行なんて」
「ダメ?」
「ダ……ダメ、っていうか、無理で」
「ダメではないね!オッケーって言ってくるわ!」
私に反撃の余地を与えず、みなみちゃんはターッと走っていってしまった。
ほ、本気!?本当に世良くんも……。
「あなた!ただいま!」
明るいみなみちゃんの声に振り返ると――みなみちゃんのそばに、瀬戸くんと、世良くんが立っていた。
「よろしく、楪さん」
「っ!」
にこ、と優しく微笑まれて、つい顔を逸らしてしまった。
後悔するがもう遅い。
あぁ……今ので絶対印象悪くなった!元々良くもないのに!!何してるの……!
「えー?世良くん、私と一緒の班になってよー」
ぎゅっ、と誰かの腕が世良くんの腕に絡みついた。
私たちはびっくりしてその子を見る。
世良くんを上目遣いで見上げる、美人な女の子。
日野梓ちゃんだった。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!