第14話

第4章 チャンスはつかむもの-7
366
2018/11/12 03:14
キョウ
キョウ
……俺慣れ?
キョウは再びきょとんとしながら不思議そうに首を傾げた。
幸崎花音
幸崎花音
彼女役、引き受けるからにはちゃんとやりたいし、……頑張りたいです
幸崎花音
幸崎花音
(キョウの役に立ちたい。そのためなら、どんなシーンでも堂々と彼女っぽく、はたから見て違和感ないようにならなくちゃ! 今すぐには無理でも特訓を重ねたら、少しはそれっぽく立ち回れるかも!)
キョウ
キョウ
……特訓って、具体的に何をすればいいの?
幸崎花音
幸崎花音
……さ、さぁ??
そこはノープランだった。
キョウは視線を外すと、あごに手を置いて黙った。少ししてから、私に視線を戻した。
キョウ
キョウ
わかった。いいよ特訓。内容についてはこれからゆっくり考える。で、どう?
幸崎花音
幸崎花音
……はい!
満面の笑みを浮かべ、頭をコクリと大きく縦に振った。
キョウ
キョウ
じゃあとりあえず、形から入ろうか
幸崎花音
幸崎花音
形から、ですか?
キョウは「うん」とうなずいた。
キョウ
キョウ
花音。今から幸崎さんのこと、花音って呼び捨てにする
幸崎花音
幸崎花音
え!?
キョウ
キョウ
あと、俺の本当の名前は、ひびき。佐鳥響。これからはそっちで呼んで
幸崎花音
幸崎花音
ひ、びきさん?
佐鳥響
佐鳥響
メンバーはみんなプライベートでは俺を響って呼ぶんだ。俺も花音って呼び捨てにする。敬語もいらない、いい?
幸崎花音
幸崎花音
……よ、呼び捨てに、あと、敬語も!? 急には無理です!
顔を横にふるふる振った。
幸崎花音
幸崎花音
(お互いを名前呼びと、ため口。本当の彼氏彼女みたいで、のぼせそう……!)
佐鳥響
佐鳥響
じゃあ、ちょっとずつ。花音の名前ってさ、いいよね。素敵だと思う
再び声にならない喜びの声をあげた。
幸崎花音
幸崎花音
(まさかあのRAISEのボーカルに、『花音』って、素敵な声で呼ばれる日が来るなんて!)
喜びにひたっていると、私の視界に伸ばされた響の手が映った。
佐鳥響
佐鳥響
今日からよろしく、花音
胸がトクトクと高鳴る。遠慮しながらそっと、響の手に触れ握手した。
幸崎花音
幸崎花音
(──契約、完了?? 奇跡が起こった……! まだ“響慣れ”する日が訪れるのか、自信や実感はないけど、……私なりに、精一杯頑張ろう!)
私の胸は嬉しさと感動でいっぱいになった。

プリ小説オーディオドラマ