第13話

第4章 チャンスはつかむもの-6
394
2018/11/05 02:03
幸崎花音
幸崎花音
(そっか。なぜRAISEの素性を秘密にしていたのか、それがちょっとだけわかった)
幸崎花音
幸崎花音
……キョウさんは、音楽に本気なんですね
アーティストとしてのキョウの音楽へのこだわりを感じた。
キョウ
キョウ
うん。何よりも音楽が好き
幸崎花音
幸崎花音
(……しゃべってる時のキョウって、とっても穏やか。動作もスマートだけどゆったり)
ステージで歌っている時とのギャップに驚きつつも、優しい印象のキョウに前より好感度が上がった。
そう思っていたら、キョウが急にくすりと笑った。
キョウ
キョウ
ねぇ。幸崎さんの顔、りんごみたいに赤い
幸崎花音
幸崎花音
……え?
キョウ
キョウ
まさか、りんごジュースっで酔った?
幸崎花音
幸崎花音
?……! わあッ!?
キョウは急に私の顔に手を伸ばし、頬っぺたに触れた。
キョウ
キョウ
熱……。大丈夫?
たしかに顔が熱かった。
幸崎花音
幸崎花音
(うわぁ……! りんごみたいに赤いって、どんだけ赤いの!?)
微笑まれ、触れられたところからさらに熱くなる。思わず持っていたグラスでばっと顔を隠した。
幸崎花音
幸崎花音
キョウさん。あまり見ないでください!
キョウ
キョウ
なんで?
幸崎花音
幸崎花音
は、恥ずかしいからです……!
キョウは私の発言に一瞬きょとんとしたあと、さらにみつめてきた。
幸崎花音
幸崎花音
……実は、まともにしゃべれる男の子は幼なじみの翔くらいなんです
身体をちぢこまらせながら、正直に打ち明けた。
キョウ
キョウ
え? そうなの?
幸崎花音
幸崎花音
……はい。でもキョウさんは優しいし、しゃべりやすいですけど……。彼女役、頑張りますが、ちょっと不安……もあります
キョウ
キョウ
不安か……。ちょっとごめん
幸崎花音
幸崎花音
わあッ!
再びキョウの手が私の顔に伸びてきて、頬に触れる。
キョウ
キョウ
ごめん。本当に苦手そうだね
固まり、声にならない叫び声をあげていると、キョウはぺこりと頭を下げてくれた。
幸崎花音
幸崎花音
す、すみません! ごめんなさい。男の子苦手だと彼女役、く、クビですか?
オロオロしながら聞いたらキョウはくすっと笑った。
キョウ
キョウ
クビとかそんなのないよ。でも、もう少し慣れてはほしいかな
驚きのあまり、目を大きく見開いた。
幸崎花音
幸崎花音
……っ、な、慣れ……る
幸崎花音
幸崎花音
(この状況に慣れる!? そんな日が、いつか私に訪れるの!?)
キョウ
キョウ
まぁ、翔はまだ見つかっていないし、時間はある。ゆっくりでいいよ
優しい言葉をかけられて嬉しかった。でも時間があるとはいえ、このままではダメだという自覚はあった。どうしよう? と頭をフル回転で働かせる。
しばらく考えてから私は、一つ提案をした。
幸崎花音
幸崎花音
あの、もしキョウさんが嫌じゃなければ……翔と連絡を取ってMVの撮影に入るまでの間に、男の子慣れ、というか“キョウさん慣れ”の特訓を、させてくれませんか!?

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