ドキドキドキ。遅れて心臓の音が耳に届く。
翔と連絡を取る。それは、RAISEのため、キョウや翔のためだ。
音楽なんてド素人の私でもお手伝いできることがある。それだけで光栄なこと。けれど思ってしまった。
一瞬で心をつかむRAISEの音が生まれる瞬間を、この目で見て、聴いてみたい……。
あふれる想いそのままに、気持ちを伝えた。
思いっきり頭を下げると、一瞬シーンと静まり返った。
キョウの返事に心がしゅんと沈んだ。
下げていた頭をぱっと上げて、期待しながらキョウを見た。
勢いよく返事をすると、くすっと笑われてしまって、ちょっと恥ずかしくなった。
キョウは私に視線を合わせると、はっきりとした口調で言った。
頭が真っ白になった。口をぱっくりと開けて私は固まった。
キョウはにこりと微笑むと続けた。
すぐには信じられなくて心の中で、『キョウの彼女役!?』と、何度も繰り返した。
胸はバクバクと拍動を強め、顔を中心に全身が熱くなっていく。
思考力ほぼゼロ状態から何とか絞り出し質問した。そしたら、とんでもない返しが来た。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!