第11話

第4章 チャンスはつかむもの-4
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2018/11/05 02:03
ドキドキドキ。遅れて心臓の音が耳に届く。
幸崎花音
幸崎花音
(図々しいかな。図々しいよね……)
翔と連絡を取る。それは、RAISEのため、キョウや翔のためだ。
音楽なんてド素人の私でもお手伝いできることがある。それだけで光栄なこと。けれど思ってしまった。
一瞬で心をつかむRAISEの音が生まれる瞬間を、この目で見て、聴いてみたい……。
幸崎花音
幸崎花音
……私、最初に聴いたライブがRAISEでよかったです。邪魔はしません。だから……、私がここに通う許可をくれませんか?
あふれる想いそのままに、気持ちを伝えた。
思いっきり頭を下げると、一瞬シーンと静まり返った。
キョウ
キョウ
バンド内のルールなんだけど、ファンはここの出入り禁止なんだ
幸崎花音
幸崎花音
(……残念。断られちゃった……)
キョウの返事に心がしゅんと沈んだ。
キョウ
キョウ
……けど、一つだけ方法がある
下げていた頭をぱっと上げて、期待しながらキョウを見た。
キョウ
キョウ
手伝い。俺たちの協力をしてくれる? そしたら関係者として出入りできる。あと、ここを秘密にしてくれるなら
幸崎花音
幸崎花音
もちろんです! 誰にも言いません!
勢いよく返事をすると、くすっと笑われてしまって、ちょっと恥ずかしくなった。
幸崎花音
幸崎花音
何をお手伝いしたらいいんですか?
キョウ
キョウ
実は、ちょうどいい人いないか探してたんだ
キョウは私に視線を合わせると、はっきりとした口調で言った。
キョウ
キョウ
翔と連絡が取れたら、曲のMVを撮ろうと考えてる
幸崎花音
幸崎花音
え……ミュージック、ビデオ……?
キョウ
キョウ
幸崎さん、出演してくれない? 俺の“彼女役”として
頭が真っ白になった。口をぱっくりと開けて私は固まった。
幸崎花音
幸崎花音
か……彼女
幸崎花音
幸崎花音
(として出演……!?)
キョウはにこりと微笑むと続けた。
キョウ
キョウ
幸崎さんがここへ来る口実にどうかな?
すぐには信じられなくて心の中で、『キョウの彼女役!?』と、何度も繰り返した。
キョウ
キョウ
ひらめいたというか、突然言ってごめん。MVのイメージが普通の女の子なんだ。君の背丈や雰囲気とか、イメージに合う
胸はバクバクと拍動を強め、顔を中心に全身が熱くなっていく。
幸崎花音
幸崎花音
……大事なMVなのに、私でもいいんですか?
思考力ほぼゼロ状態から何とか絞り出し質問した。そしたら、とんでもない返しが来た。
キョウ
キョウ
幸崎さんがいい。かな

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