職員室を出てドアを閉める。
独特の雰囲気に緊張していた私は、ふうっと息を吐いた。
憧れのキョウと再会できた翌日から私は浮かれまくった。おかげで朝提出しなくちゃいけなかったプリントをすっかり忘れていた。
よし。帰ろう! と、気を取りなおして振り向いた時だった。
響も気がつき、目が合う。まさかこんなところで会えるとは思ってなくて、嬉しくて心が舞い上がった。
私のテンション高めの声に響は思わず口元をほころばせ、メガネのブリッジを人差し指ですっと直した。ちらりと職員室へ視線を向ける。
まだ慣れてなくてあわてて言い直すと、響にくすっと笑われてしまった。
“秘密基地”とは、昨日響と話をした地下のスタジオ『SOUND』のこと。RAISEのメンバーはそう呼んでいると教えてもらっていた。
響の表情に真剣な色が混ざる。
すぐに連絡を取ると期待させてしまった手前、言葉を濁していると、響はこの場所が悪いと思ったらしい。
言いながら、すぐそばの階段を上りはじめたため、急いで響のあとを追った。
連れてきてくれた場所は、北校舎四階の音楽室だった。なぜか響の手には職員室にあるはずの鍵があって、鍵を開けるとスタスタと入って行く。
響がデコピンのかまえをしたので、慌てておでこを両手で隠した。
次の瞬間、デコピンではなくてぽんと響の手が頭に触れた。
ふわりと微笑まれ、胸がとくんと反応した。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。