RAISEのキョウに手を引かれているなんて……とても信じられなかった。
キョウはエレベーターではなく、階段を選んだ。ゆっくりと下りて行ってもらっているのに私は、今にも足がふらつきもつれて転びそうになる。
階段を下りた先にはドアがあった。キョウはつかんでいた私の手を離し、ドアを開けた。
ぱちんと音がしたあと、暗かった部屋がパッと明るくなった。
そろりと、部屋の中へと足を踏み入れた。
すぐ目に飛びこんできたのは、大きなドラムセットや何種類ものギターだった。他にもキーボードや黒くて四角い不思議な機械もある。
キョウと二人っきりに緊張しつつも、胸は好奇心でわくわくしはじめる。
楽器だけじゃなく、手前にはイスやソファ、ローテーブル、腰ほどの高さの冷蔵庫まであった。すすめられたソファに座ると、キョウは真剣な目を私に向けた。
キョウはしばらく考えこんだあと、口を開いた。
首を傾げながら質問した。
つまりクリスマス以降……。そう聞いて胸にずきんと鈍い痛みが走った。
まっすぐみつめながらキョウは、少し切羽詰まった様子で言った。
急にここへ招き入れてくれた理由がわかって、協力をしてあげたいと思った。けれど……。
私は膝の上の手をみつめ、ぎゅっと握った。
驚いているキョウに向かってうなずくと、説明を続けた。
理由は、私の受験する学校についてだった。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。