第8話

第4章 チャンスはつかむもの
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2018/10/29 09:49
RAISEのキョウに手を引かれているなんて……とても信じられなかった。
キョウはエレベーターではなく、階段を選んだ。ゆっくりと下りて行ってもらっているのに私は、今にも足がふらつきもつれて転びそうになる。
階段を下りた先にはドアがあった。キョウはつかんでいた私の手を離し、ドアを開けた。
ぱちんと音がしたあと、暗かった部屋がパッと明るくなった。
キョウ
キョウ
入って
花音
花音
……お邪魔、します
そろりと、部屋の中へと足を踏み入れた。
すぐ目に飛びこんできたのは、大きなドラムセットや何種類ものギターだった。他にもキーボードや黒くて四角い不思議な機械もある。
花音
花音
あの。ここって……?
花音
花音
(もしかして、RAISEの練習場所?)
キョウと二人っきりに緊張しつつも、胸は好奇心でわくわくしはじめる。
キョウ
キョウ
適当に座って
楽器だけじゃなく、手前にはイスやソファ、ローテーブル、腰ほどの高さの冷蔵庫まであった。すすめられたソファに座ると、キョウは真剣な目を私に向けた。
キョウ
キョウ
君、翔と幼なじみって本当?
花音
花音
本当です。翔とは小学校に上がる前から友達です
キョウ
キョウ
君の名前は?
幸崎花音
幸崎花音
幸崎花音、です
キョウはしばらく考えこんだあと、口を開いた。
キョウ
キョウ
……翔と会わなくなって三ヶ月になる。長く連絡が取れないから、心配しているんだ。翔に会いたい。幼なじみの幸崎さんなら、連絡取れないかな?
幸崎花音
幸崎花音
連絡が取れない? どうしてですか?
首を傾げながら質問した。
キョウ
キョウ
理由はわからない。翔は、すぐに戻ってくるから少しのあいだ自由に活動させてって言ったんだ。あいつが納得するまで待っているつもりだったけど、そろそろ活動を再開したくて
幸崎花音
幸崎花音
そんなに長く会っていないと心配だし、色々困りますよね……。具体的にいつからですか?
キョウ
キョウ
イブのライブの数日後が最後
つまりクリスマス以降……。そう聞いて胸にずきんと鈍い痛みが走った。
幸崎花音
幸崎花音
……あの、翔の学校には?
キョウ
キョウ
入学した高校? 放課後に何度か行ったよ。でも空振り。捕まえられなかった
幸崎花音
幸崎花音
(あ、そっか……。翔の学校へ行くにはここから二時間以上かかる。学校が終わって向かっていたんじゃ、ちょっと難しいかも)
キョウ
キョウ
どうしようか次の手を考えている時に、翔と幼なじみの君が現れた
まっすぐみつめながらキョウは、少し切羽詰まった様子で言った。
急にここへ招き入れてくれた理由がわかって、協力をしてあげたいと思った。けれど……。
私は膝の上の手をみつめ、ぎゅっと握った。
幸崎花音
幸崎花音
……ライブがあった次の日、クリスマスパーティーを友達としました。その場には翔もいて実は、……その時に私たち、ケンカしちゃったんです
キョウ
キョウ
ケンカ?
驚いているキョウに向かってうなずくと、説明を続けた。
幸崎花音
幸崎花音
翔と絶交状態です……。仲直りをせずにそのまま中学校を卒業しちゃって……
理由は、私の受験する学校についてだった。

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