第16話

第5章 秘密の特訓-2
349
2018/11/12 03:14
ピアノ以外の楽器は隣の準備室に片付けられていて、響と二人っきりを意識してしまい落ち着かない。周りをきょろきょろ見回す。
幸崎花音
幸崎花音
教室、無断で入ってもいいの?
佐鳥響
佐鳥響
大丈夫。で、翔がどうしたの?
あらためて聞かれ、ごくっとつばを飲みこんだ。
幸崎花音
幸崎花音
……響、ごめんなさい。翔のお母さんにはね、すぐに会ってきたんだけど、寮の電話は基本家族しかダメみたい……。しかも夜九時まで。携帯の持ち込みも禁止みたい。連絡取りたいってお願いはしてきたんだけど、翔のお母さんいつも夜遅いし、ちょっと時間かかるかも……
私は肩を落とした。
幸崎花音
幸崎花音
本当にごめんなさい……。私、幼なじみなのに連絡取れなくて……。こんなことなら、翔とケンカするんじゃなかった。卒業前にさっさと仲直り、しておけばよかった……
後悔でへこんでいると、頭の上に優しい声が降ってきた。
佐鳥響
佐鳥響
ありがとう。気持ちだけでも嬉しいよ。それにきっと、もうすぐ連絡取れるようになる。そしたら花音たちも仲直りできるよ
メガネ越しに見る響の瞳に、胸がぎゅっとなる。
幸崎花音
幸崎花音
(あまり役に立っていないのに、責めるどころか励ましてくれてる。響って本当に優しい……)
佐鳥響
佐鳥響
報告も、秘密基地に来てくれてもいいけど俺いない時もあるから、連絡先交換しておこうか
幸崎花音
幸崎花音
え! い、いいんですか?
佐鳥響
佐鳥響
今スマホ持ってる?
幸崎花音
幸崎花音
も、もも、持ってます!
スカートのポケットからスマホを取り出し、震える手で響に差し出した。
幸崎花音
幸崎花音
……響、ありがとう
嬉しくてつい笑みがこぼれる。響の番号が入ったスマホを大切に胸のところで抱きしめた。
佐鳥響
佐鳥響
そうだ。ついでに曲のデータもいくつかあげようか?
幸崎花音
幸崎花音
えええ!!
思わずスマホを落としそうになる。
佐鳥響
佐鳥響
あ、いらない?
幸崎花音
幸崎花音
いります。すっごく欲しいです!
ほぼ同時に答えていた。
佐鳥響
佐鳥響
じゃあ、花音のスマホ貸して。曲聴けるように、ちょっと操作するけどいい?
幸崎花音
幸崎花音
もちろんです。お願いします
数分後、響は「できたよ」と言って画面を見せてくれた。
幸崎花音
幸崎花音
え。もうできたの?
佐鳥響
佐鳥響
うん。このアプリを開いて、再生を押せば曲が流れるから
幸崎花音
幸崎花音
……嬉しい。ありがとう!
幸崎花音
幸崎花音
(秘密基地に通えるだけでも貴重で嬉しいことなのに、これでいつでも好きなだけRAISEの曲が聴ける……。うわ……幸せ!)
にこにこ笑顔で何度も響にお礼を言った。
佐鳥響
佐鳥響
このデータはメンバー用のだから、花音が個人で楽しむのはいいけど、ファンや他の人にあげないでね
幸崎花音
幸崎花音
うん、わかった。約束する!……早速聴いてみてもいい?
佐鳥響
佐鳥響
いいよ
ドキドキしながら再生ボタンに指を滑らせた。

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