『協力者』の、
沙月の、笑みに恐怖を感じたのは初めてだ。
背筋が凍るような笑顔を見せるなんて予想すらしていなかった。
ああ、この子はこんなにも冷たい声が出せるのか。
親友の闇の一番深いところを見た気分になる。
私には踏み込んではいけない領域。
楽しそうに話す沙月。
『ありがとう』だなんてひとつも思ってないけれど、言っておくよ。
だってこれからは私の召使いになってもらわないと困るんだから。
なんでかって?
私は沙月も恨んでいる。
優衣みたいにならなかったから使ってやってるだけで。
いずれ、こいつも堕とすのだから。
『新時代の幕開け』か。
まさにそうだ。
私が1軍トップ、新女王。
これでいじめのないクラスの出来上がり。
『犠牲が出たじゃん』なんて言わないでよね。
改革に、革命に、犠牲は必要でしょ?
正当防衛だよ。
ーーーバイバイ1軍様。
******沙月side
『前原七瀬を脅迫して自殺に追い込んだのはこいつ。』
『玉置莉音をいじめられっ子に仕向けた黒幕もこいつ。』
『人の彼氏を取ったのもこいつ。』
あたしは学校も裏サイトに書き込む。
あたしが海に、頼んで七瀬を脅迫してもらったことを、詩織の罪と仕立てた。
莉音の件は知らないけれど、きっと詩織が黒幕。
そして、あたしは海と、詩織が並んで歩く画像も載せた。
ちなみに住所から何から個人情報ももちろんだ。
海の顔だけはモザイクをかけたけどね。
さあ、あと少し。
詩織を堕とす準備は整った。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!