第23話

届かない
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2019/05/10 09:53
詩織
美空、自分の言っていること、わかってるの?
美空
うん、わかってるよ。
私はもう、きえてしまいたい。

私はわかってしまった。

美空は決意を固めている。
もう既に私の入る隙間なんて、全くないくらいに。
美空
私、もう歩けないの。
お母さんにもいらないって言われちゃった。
美空
妹が……七瀬がグレてしまったのは、
私のせいだったの。



止めなきゃ、止めなきゃ……。

とめなきゃとめなきゃとめなきゃ


とめないと…。

でも、足が動かなかった。
止める一歩が出なかった。

手が伸ばせなかった。


届かない、私には届かないーーーーー。
美空
もう、私の居場所はどこにもないよ。
詩織
そんなことっ!!
そんなことないに決まってるよ!

ましてや、私がいるじゃない!!


その場から動きたかった。
美空の元へ駆け寄ってしまいたかった。


でもできなかったから、
叫ぶことしか、私にはできなかったから。
美空
私なんかで詩織を、縛りたくない。
詩織は自由に生きるべき、だから。
詩織
それは美空が決めることじゃないよ!!
私が…私が決めることっ、だよ。


抱きしめたい。

……抱きしめたい、のに。
私には踏み込めない。


見えない線が引かれてるみたいで。
美空
そうだよね…。
でも、それは私が耐えきれないの。

美空は、ぎごちなく私の方を向いた。

逆光のせいで見えない。
見えなかったけど……、美空の心が一瞬だけ見えた気がした。
美空
だから…、詩織。
今までありがとう。

『澄んだ綺麗な、空色の心が。』
美空
バイバイ、詩織。
美空が、凄い勢いで漕ぎだして向かったのは一箇所だけ壊れたフェンスの所。

そんな…こと、しないよね?


美空は、美空は飛び降りる気なんかないよね?
詩織
っ……!!
美空が飛び降りた。
幻覚だと、だれか言ってくれ。

嘘だと訂正して、ください。


ねえ…、美空ぁぁ。



























『……いや、私にとっての憧れの1軍様!』

そう、美空の心が言った気がしたーーー。

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