私はわかってしまった。
美空は決意を固めている。
もう既に私の入る隙間なんて、全くないくらいに。
止めなきゃ、止めなきゃ……。
とめなきゃとめなきゃとめなきゃ
とめないと…。
でも、足が動かなかった。
止める一歩が出なかった。
手が伸ばせなかった。
届かない、私には届かないーーーーー。
その場から動きたかった。
美空の元へ駆け寄ってしまいたかった。
でもできなかったから、
叫ぶことしか、私にはできなかったから。
抱きしめたい。
……抱きしめたい、のに。
私には踏み込めない。
見えない線が引かれてるみたいで。
美空は、ぎごちなく私の方を向いた。
逆光のせいで見えない。
見えなかったけど……、美空の心が一瞬だけ見えた気がした。
『澄んだ綺麗な、空色の心が。』
美空が、凄い勢いで漕ぎだして向かったのは一箇所だけ壊れたフェンスの所。
そんな…こと、しないよね?
美空は、美空は飛び降りる気なんかないよね?
美空が飛び降りた。
幻覚だと、だれか言ってくれ。
嘘だと訂正して、ください。
ねえ…、美空ぁぁ。
『……いや、私にとっての憧れの1軍様!』
そう、美空の心が言った気がしたーーー。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。