私はあれから海と付き合っている。
不破くん呼びはやめて、呼び捨てになっているのはそれが理由。
私の生活は一気に変わった。
美空、みてる?
美空の仇はとったよ?
私はクラスの1軍トップになった。
陽奈には登校し始めるように命令した。
命令を聞いた陽奈は、沙月とともに私の取り巻きをしている。
陽奈は私の沙月を堕とす計画を知っている。
2軍のごくごく平凡な女子に話しかければ見せられたのはスマホの画面。
『◯△高校裏サイト』
書かれていたのは…、、
私の、悪事について。
だれが、こんなこと。
戸惑うのは無理はないだろう。
私がした一連を知っているのは陽奈と沙月。
陽奈はこんなことできないはずだし。
じゃあ、沙月が…、、やったの?
気がつけば私は沙月の元へ走り出していた。
こんなこと、こんなこと!!
探し回って、たどり着いたのは、放送室。
扉を開ければ沙月が座っていた。
焦る私をよそに落ち着いている沙月がムカつく。
なんで、こんなこと。
放送用マイクに口を近づけそう言った沙月。
その行動は謎で。
私は、意味がわからなかった。
恐る恐る聞いてみれば、沙月の笑顔は怖かった。
怖いのは知っていたけど。
それでも怖い。
私の声が叫びに変わる。
私が沙月になにをしたって?
沙月への計画はまだ先なのに。
低い冷たい声は私の心を突き刺す。
海のせい?
そんな、そんなことあるのか。
頭に回るのは『絶望』ただそれだけ。
私の1軍の地位は終わった。
もう、終わりだ。
せっかくここまできたのに。
あれ?私のしたかったことってなんだっけ?
美空の仇とり……、、だよ?
じゃあなんで地位のことなんて考えたの、私。
なんで、なんでよ。
***
自分の精神が壊れていくのがわかった。
自分が消えていくのではないかと恐怖を感じた。
なにを間違えたのか。
取り返しのつかないことをしたのか、どうなのか。
頭の中で巡る考えはぐちゃぐちゃになって消えていく。
ひとつひとつ消えていって、最後には何もかもどうでもよくなった。
けれど、私の心に今でも残っているのは。
残っているのは、沙月が最後に言った言葉。
たった一言のその言葉。
『バイバイ1軍様。』
ーーー完
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。