私は、今、病院の屋上に向かっている。
何故なら……、、
『今日、お見舞いに来るなら、屋上に来て?』
そう、美空から連絡が来たからだ。
何か起こる気がしてたまらなかった。
ただ単純に景色を眺めたいだけ?
外の空気を吸いたいだけ?
ーーーーーーーーーーーー美空っ!!
学校帰りの放課後。
病院の屋上は、夕陽で照らされて。
美空の背中が見えたーーー。
慣れてきた、車椅子にすわった美空は、
私に背を向けたまま話し始めた。
なんでだろう…。
目から涙が溢れてしまった。
なんなの、美空?
ありがとう、だなんて。
別に今日言わなくてもいい、のに。
待って、待ってよ……美空!!
私はまだ美空を幸せにできてもいない。
なのに…、
『幸せにしてくれた』なんて。
『ありがとう』なんて。
美空は言葉を閉ざした。
本当に嫌な予感がする。
私を置いていかないで。
美空…!!
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!