憎しみを込めたような声。
私は何処か悲しくなってしまう。
なんでなのかな。
私の彼氏だと名乗る謎の彼の声を聞かずに、祐樹くんは私の腕を引っ張った。
なんなの…かな。
わかんない、わかんないけど彼のことを私は知ってる。
きっと…いや絶対知ってるよ。
だけど、
だけど。
口に出た言葉は祐樹くんに届いてしまった。
自然に出た涙の意味がわからない。
自分の存在はなんなのかわからない。
きっと、美空ちゃんが言っていたことは確かなこと。
美空ちゃんの人違いじゃ無いんだと思うよ?
だけど。
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~不破海side
なんでなんだ。
なんであんな奴と、先輩が。
わけわからなそうにしていた先輩は嘘をついてないように見えてしまった。
信じたいだけかもしれないけど、そうだと思う。
本当に俺のことを知らないんだろうな。
忘れたのかなんなのか。
突如消えた先輩とともに、あの学校は…先輩のクラスは負のオーラを纏うようになってしまった。
沙月が何かをしたのも知っている。
けど、先輩。
俺を見捨てるなんて。
そっちの方がよっぽど罪深いよ。
前原七瀬を追い込んだことよりもね。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!