第37話

参拾陸
34,216
2021/01/09 11:09
あなたside






一通りいい終わったあと、お酒を飲もうと手を伸ばすと、その手が別の方向に引っ張られて、


先生に抱きしめられた。





大瀬良あなた
先生、どうしたの…?
五条悟
五条悟
悲しいんだよ
大瀬良あなた
なんで?
五条悟
五条悟
君が、自分の命を大切にしないから
大瀬良あなた
私の事なのに、
先生が悲しいの?




私は悲しくないのに。





五条悟
五条悟
うん




なんでだろう。










涙が止まらなかった。











落ち着いた口調だったけど、私は泣いていたし、敬語だって外れていた。




笑顔でいればカナエ姉さんが頭を撫でてくれるから、笑顔でいたのに。




そんな笑顔も忘れて、私は自分の目から溢れる涙に




感動するように、

呆然とするように、




馬鹿みたいな何も考えてないような顔をしていた。





五条悟
五条悟
ごめん。
もっと早く聞いておけばよかった。
なんにも分かってなかった
五条悟
五条悟
それどころか、
君のことを疑ってた。
あなたが人を恨む事が出来ない人だって
わかってたのに。
五条悟
五条悟
全てを許して、
代わりに自分のせいにするような、
誰よりも優しい子だって分かってたのに。




今まで殺された仲間や肉親が

今になって脳に浮かんできた。





悔しくなってきた。

叫びたくなってきた。





大瀬良あなた
っ…ぁ……






何かがだんだん壊れてきた。




どうして

なんで

何が悪かった

何をしたら良かった

嫌だったのに






パキパキと音を立てて落ちていくそれは、

心を守るために纏っていた、









氷の壁。





大瀬良あなた
みんなッ……可哀想、可哀想って…!!
…誰も、彼も…私…の事も…
仲間、や………肉親を…
助けなかった奴らみんな!!
大瀬良あなた
私の…事、……可哀想って…言うな!!
大瀬良あなた
同情っ…するなら……、
…っ、死んで償え!!!
うわぁぁぁあああっ…!!





悔しい、悔しい悔しい。




悔しくてたまらない。







空に泣き叫んで先生に向かって泣きじゃくった。






背中に回された手が、今は何よりもあたたかい気がする。






心を纏う氷が何故崩れたのか、

今溢れているのはどういう意味の涙なのか、

今は知らなくてもいいと思った。





知らないままでいいと思った。











「なんで私に優しくするんですか」と聞くと、

「君に笑って欲しいから」と言われた。




大瀬良あなた
先生が何考えてるのか…理解、できません、



半べそかきながらそういうと、




五条悟
五条悟
分かるまで待ってるよ



そう返された。



____次回もよろしくお願いします!

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