あなたside
一通りいい終わったあと、お酒を飲もうと手を伸ばすと、その手が別の方向に引っ張られて、
先生に抱きしめられた。
私は悲しくないのに。
なんでだろう。
涙が止まらなかった。
落ち着いた口調だったけど、私は泣いていたし、敬語だって外れていた。
笑顔でいればカナエ姉さんが頭を撫でてくれるから、笑顔でいたのに。
そんな笑顔も忘れて、私は自分の目から溢れる涙に
感動するように、
呆然とするように、
馬鹿みたいな何も考えてないような顔をしていた。
今まで殺された仲間や肉親が
今になって脳に浮かんできた。
悔しくなってきた。
叫びたくなってきた。
何かがだんだん壊れてきた。
どうして
なんで
何が悪かった
何をしたら良かった
嫌だったのに
パキパキと音を立てて落ちていくそれは、
心を守るために纏っていた、
氷の壁。
悔しい、悔しい悔しい。
悔しくてたまらない。
空に泣き叫んで先生に向かって泣きじゃくった。
背中に回された手が、今は何よりもあたたかい気がする。
心を纏う氷が何故崩れたのか、
今溢れているのはどういう意味の涙なのか、
今は知らなくてもいいと思った。
知らないままでいいと思った。
「なんで私に優しくするんですか」と聞くと、
「君に笑って欲しいから」と言われた。
半べそかきながらそういうと、
そう返された。
____次回もよろしくお願いします!
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。