第36話

参拾伍
34,888
2021/03/02 10:19

五条side




酒を置いたあなたは、ゆっくり話し出した。




大瀬良(なまえ)
大瀬良あなた
少女は虐待されていました。
五条悟
!?




どうやら第三者視点から話すらしいが、その事実に驚いた。



…虐、待……




大瀬良(なまえ)
大瀬良あなた
別に望んでた訳では無いんですが。
大瀬良(なまえ)
大瀬良あなた
充分な量の食事も与えられず、
殴る蹴るの暴行。
それこそ、骨も折れました。



…小学生以下…か。



という事は、物心着いた頃から虐待は始まっていたのだろう。





大瀬良(なまえ)
大瀬良あなた
しかし、少女は頭が良かった



それ、自分で言う?



大瀬良(なまえ)
大瀬良あなた
自分は必要では無いことも、
助けてくれるヒーローが居ないことも、
暴行された時の応急処置も
全て理解していました。
大瀬良(なまえ)
大瀬良あなた
感情も消え、無痛症になり、
希望も潰れました。
ですが、少女が自ら死のうとは
思いませんでした。
子供ながらの好奇心と僅かながらの
復讐心があったんでしょうね



あなたはきっと、大人になるのが早すぎた。




大瀬良(なまえ)
大瀬良あなた
少女は基本無情です。
それが悲しいことだと、
憐れまれることだと、そうは思いません
大瀬良(なまえ)
大瀬良あなた
そして、己を否定する気は、
少女には毛頭ありませんでした
大瀬良(なまえ)
大瀬良あなた
産んでくれと頼んだ覚えも、
生かしてくれと頼んだ覚えもありません
大瀬良(なまえ)
大瀬良あなた
勝手に産んで、
勝手に暴行して、
勝手に生かしたくせに、
勝手に嫌うなんて
可笑しい話だと思いませんか?



そう聞かれて、戸惑ってしまったが、


あなたはクスリと笑って話を戻した。




大瀬良(なまえ)
大瀬良あなた
少女はただ、あの不幸があって
今の自分があるのなら、
生きていたいと思いました
大瀬良(なまえ)
大瀬良あなた
だからあの家から逃げたんです。
そして、孤児院に引き取れました。



あなたの生い立ちは全て知らなかった。




聞こうともしないし、

話出そうとも思わなかったからだ。





…もっと、早く聞いていれば…




後悔したってもう遅いのに、今までにないくらいの後悔が押し寄せてくる。





大瀬良(なまえ)
大瀬良あなた
悲しい、苦しい、痛い…
なんて思う事が無意味だということは
だいぶ前から知っています
大瀬良(なまえ)
大瀬良あなた
……1年前に、
優しさをもらって、
あたたかさをもらって、涙を貰って、
少女の命が自身だけのものでは無いということを知りました。



1年前…



あなたが失踪した時からだ


大瀬良(なまえ)
大瀬良あなた
大事な人を傷つける悪者を
許してはいけないということを
学びました。
大瀬良(なまえ)
大瀬良あなた
そして、
特別強く作られたこの身体は
弱きも者を守る為にあるのだと
教えてもらいました。



グッと拳を握ると、

自分の胸にそれを当てるあなた。




大瀬良(なまえ)
大瀬良あなた
少女は、こんな中身が無い私を
必要としてくれる優しい人達を
失いたくないと思いました。
大瀬良(なまえ)
大瀬良あなた
…結局、失っちゃったけど。




そうやって苦笑するあなた。



いっそ、こんな不幸を与えた奴を見つける前に
全員殺してしまおうかと考えた。




なのに彼女本人は
そんな事を話している時でさえ笑っている。








許しているのだ。




全てを。








全て自分のせいだと思ってるのだろう。







大瀬良(なまえ)
大瀬良あなた
少女が判断を間違えたと言えば、
生まれた時に、心臓を動かした事だと思います
大瀬良(なまえ)
大瀬良あなた
何も知らない、
幸せなまま死んでいたら、
この不幸を受けずに済んだのかもしれない。
大瀬良(なまえ)
大瀬良あなた
人生で1番の幸福……幸せに死ぬ事を、
何も知らずに死ぬ事を…
もっと最初から、
生きたいと思う前から
何より先に知っていたら
大瀬良(なまえ)
大瀬良あなた
こんな事にはならなかったのに



他人事のように、あなたは笑った。





____次回もよろしくお願いします!


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