目を覚ますと、知らない天上だった。
身体の至る所に包帯が巻かれている事に気づいて、
怪我をする度に優しく治療してくれたしのぶを思い出した。
…巻き方が違う。
しのぶはこんな巻き方じゃ無い。
包帯を巻き直してから、ベットから起き上がって身体を動かした。
動きにくいこの身体。
刀を杖代わりに使って歩く。
カッカッ
…こんなスピードじゃいつまで経ってもみんなの所に行けない。
刀に持たれながら地面に足を着いた。
…こんな事で…柱の私が……
目の前の男の子にそう呼びかけた。
「別にいい」ですか…。
へぇ…
ニコリと笑ってそう言った。
そう言ってスっと立ち上がった。
驚いたような顔をしている狗巻棘くん。
平然とした顔をして立った私に驚いているようだが、実はと言うともう骨がミシミシ音を立てていて限界だ。
手を貸そうとしてくれていたのか、
差し伸べてきた手を私は払った。
ハッ
危ない、危ない。
うっかり柱なんて言ってしまった。
身体が悲鳴をあげているがトタトタと足を進めて廊下を歩く。
ヒュッと心に風が通ったような気がした。
急ぎ足させていた足を止めて、顔だけ少し後ろに向ける。
そう言ってもう一度走り出した。
身体は痛くなかった。
怒ってるからだ。
視界がぼやけてきた。
泣いてるからだ。
____次回もよろしくお願いします!
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。