第6話

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2020/12/25 11:06
浦野秀太
ねー、どうしたら良いと思う?
本田康祐
それは自分で考えるべきだろ
浦野秀太
そうだけど、何が出来るかな?
本田康祐
とりあえずタピるんだろ?
浦野秀太
こーすけくんもタピる?
本田康祐
いや、オレはいいや
浦野秀太
ったく、引きこもりなんだから
本田康祐
うるせー
 康祐くんはあまり出掛けない。オレもそんな出掛けることはなかったからそういうもんだと思ってたけど、初めての学校生活で外の楽しさにも気付き始めた。
浦野秀太
楽しいよ?お出掛けも
本田康祐
オレは一般的な『普通』じゃなくてオレの『普通』でいいの
浦野秀太
そういうもん?
本田康祐
そういうもん
 その時だった、一瞬フワッとした。全身の力がスッと抜けるような感覚。俺はその場に倒れた。
本田康祐
秀太!大丈夫か
浦野秀太
あ、あれ?
本田康祐
とりあえずなんともなさそうだな。痛いとことかは?
浦野秀太
うん、大丈夫
 康祐くんに抱き起こされながら手をグーパーグーパーしてみる。うん、動く。
本田康祐
多分一瞬ノイズが走ったのかもな。まぁ、まだ時間はあるし大丈夫だと思うけど
浦野秀太
うん、大丈夫そうだけど
 あぁ、くやしいなぁ。悔しい。そんな俺の表情を読んだのか康祐くんが心配そうに顔を見てる。
本田康祐
秀太、別に頑張らなくってもいいんだぞ?
浦野秀太
頑張ってないよ。やりたいことをしてるだけ
 俺はゆっくりと立ち上がる。大丈夫、まだ動く。生きてる。
浦野秀太
せっかく生きてるんだから、やりたいことやりたいじゃん?
本田康祐
そうかもしれないけど
浦野秀太
俺が生きてる証拠が欲しいんだよ。
本田康祐
かっこいいこと言うなよ
浦野秀太
いや、言いたいでしょ
 康祐くんが目を真っ赤にしている。ほんと涙もろいんだから。
浦野秀太
そんな悲しい顔しないでよ
本田康祐
だって
浦野秀太
康祐くんが先に泣くから、俺が泣けないじゃんか
本田康祐
しゅうた…
浦野秀太
うそうそ、まだ負けたわけじゃないから。運命に抗ってなんぼでしょ。だから康祐くんも諦めないでよ。
 頷く康祐くんの肩を叩いて部屋を出る。扉にもたれ掛かりそっと自分の首をさわる。頸動脈に触れると自分の鼓動を感じる。
浦野秀太
…俺はまだ生きてんだから
 まずは文哉だ。勝くんと文哉とタピらないと。こんなとこで終わる気はない。
 自室に戻ってパソコンの画面を覗き込む。変わらない計算結果にうんざりする。そんなとき、ポケットに入れた携帯が振動した。
ー秀太?今暇?
 メッセージアプリで初めて勝くんからメッセージが届いた。なんだこれ、嬉しい。あわててアプリを開く。
ーいきなりなんやけど、今から出てこれん?
 誘われてんじゃん。可愛い『ok』のスタンプを押して、『どうしたの?』と返す。
ー文哉から呼び出されてんけど、様子が変なんよ
 変?…わかんないけどまぁいいか。ジャケットを羽織って出掛ける準備をする。康祐くんの部屋の扉をコンコンと2回叩く。
浦野秀太
こーすけくん、ちょっちでかけてくるねー
 返事を待たずに出掛けた。勝くんが心配してるんだからよっぽどだろう。待ち合わせの公園へ急ぎ足で向かった。

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