学校のない休みの日は比較的籠って作業をしてたけど、まぁ、どうせ意味ないし、今日は中川勝就に会いに行くって決めてた。
来てみたは良いけど、どうやって会う?クラスメートでもなければ会ったこともない。
家の前でうろうろしてた俺を見てたのか、2階の窓から顔だしてにっこり笑って手を振っている。
そうして俺ははじめて会う中川勝就宅にお邪魔することになった。玄関に入ると窓から顔出していた中川くんが出迎えてくれた。
わからない、なんで彼が学校に来れなくなってるんだ?そこまで病んでるようには見えないけど…居間に通され、ソファーに座る。
柔らかっ。いつもワーキングチェアばっかだったからこれはこれで良いな。康祐君にお願いするかな。いや、ちがうちがう、今はそれじゃない。
中川くんが笑いながらコーヒーの入ったマグカップを出してくれる。
俺の知ってる情報は康祐くんが調べてくれたものだからどこまでがほんとかどこまでが嘘かわからない。だから、知っている、で良いのか、果たして知らないなのか…
※ ※ ※ ※
教師の怒鳴り声からいつも始まる風景だった。その瞬間からいつもだったらクラスメートは石になるし、俺と文哉はただどうにかこの状況を打開する術を考えていた。今思えば逃げればよかったかもしれん。それでも、そのときはそんな頭がなかってん。
教師が文哉につかみかかったときいつもだったら俺が止めに入るんやけど、その日はクラスメート数人が俺を止めた。
クラスメートと押し問答してる間に教師が文哉の胸ぐらをつかみ教室の隅へ連れていった。文哉は絶対やり返さなかったし、抵抗しようともしなかった。だからこそ行為がエスカレートしてたのもあったのかもしれない。
罵声を浴びせ蹴りつける。見てられんかった。クラスメートの手を振りほどき、文哉のとこに行けたときにはもうボロボロだった。今まではこんなになることなんてなかったのに。
ふらふらの文哉を連れて教室を出ようとしたとき、俺の背中に激痛が走った。教師が竹刀で俺のことを殴ったらしい。その瞬間、文哉がキレた。
獣のような声をあげながら泣きながら先生につかみかかって殴る蹴るの暴行を浴びせた。頑張って文哉を止めようとしたんだけど、もう止めることが出来なくて…
※ ※ ※ ※
同時に2人で吹き出した。前から友達だったみたいに笑いあって。そうそう、これこれ、俺がしたかった普通のやつ。
俺が思っているより、この世界は楽しいかもしれない。教室の隅でどこか遠くを見つめ続けていたアイツといまここで不敵な笑みで俺を見てるコイツと仲良くなれたら絶対楽しい。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。