勉強会の帰り道、俺は1人で消しゴムのおまじないのことを考えていた。
消しゴムにテオくんの名前書いてみようかな…
なんて、叶わないとわかっていてもそんなことを考えていた。
1人で呟いたその一言が本人の前で言えなくて。
意気地無しな自分。
勇気のない自分。
今すべての自分が大嫌いだった。
次の日になり___。
いつも通りの授業。
ふと、目に入ったのがやっぱり消しゴム。
俺は消しゴムを見つめ、筆箱に入っていたペンで
『テオくん』と書こうとした。
でもなぜか手は止まってしまった。
俺は消しゴムに書くことをやめた。
叶わない恋だとわかっていたから。
叶いもしない恋なら頑張ったって無駄じゃんか、
そんなネガティブな考えが俺の心に突き刺さった。
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『じーんたん!』
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心の中でテオくんの笑顔が見えた。
もし告白して今後あの笑顔が見えなくなると思うと無性に怖くなった。
もっとあの笑顔を見ていたい。
でももしテオくんに彼女が出来たらあの笑顔は"彼女のもの"になってしまう。
だから今この時間を楽しむんだ。
この瞬間を。
テオくんの隣は俺がいい。なんてバカな考えを、持っている自分がアホらしいと思っていることは既にわかっている。
でもまだ君の隣にいていいなら、
邪魔じゃないならせめて今だけはそばにいさせて。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。