第18話

─16話─
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2019/12/15 06:01
部屋にはいなかった。


と、いうことは。


もう場所は大体検討ついたな。


何年お嬢アイツの執事やってると思ってんだ。


俺は息を切らしながらも、


走って、その検討がついている場所へと向かう。



その場所は、敷地内の小さな小屋で、


鍵は、外側は壊れていて機能しない。


内側からしか鍵がかけられない小屋。


こんなボロい小屋を、


爺さんがなんで壊さないかは知らねぇが。


お嬢はここにいつも隠れる。


何かを壊してしまって言い出せなかった時、


爺さんと少し言い争ってしまった時、


必ずお嬢はここに隠れてる。


まぁ毎回上手く言って、連れていっているがな。


しかもそれは俺しか知らない。


だから、お嬢も分かってんだろうな。


俺が来ることも、何か説得されることも。
だがまぁ、当然鍵は掛けられているだろう。
俺は、小屋へ近付いて、ノックした。
御波 直
御波 直
お嬢、戻りましょう。皆待ってます。
すると、泣いていたのか、少し震えたような声で、
神城 未来乃
神城 未来乃
嫌だ……もう今更戻れない…
御波 直
御波 直
それなら多分、大丈夫です。
お嬢の行動は〝勇敢〟でした。
神城 未来乃
神城 未来乃
私が……?
御波 直
御波 直
はい、あの爺さんも、分かってくれる筈ですよ。
御波 直
御波 直
てか、俺もお嬢を見放してしまったので、多分クビです。
神城 未来乃
神城 未来乃
え……!?
御波 直
御波 直
はい、今少しでも申し訳ないとでも思ったのなら、ナイフ。
御波 直
御波 直
その隙間から捨ててください。

そう言うとお嬢は、素直にナイフをこちら側に捨てた。
それをハンカチで掬い取り、ポケットに入れた。


ナイフさえ捨ててもらえば、


後はボロい扉蹴り飛ばして、


無理矢理ってのもアリだけどよ。
神城 未来乃
神城 未来乃
…まだ、落ち着けないよ…
どうしても、戻れない…
御波 直
御波 直
…それなら。
御波 直
御波 直
俺の話、聞いてくれませんか。
御波 直
御波 直
そういえば、俺はお嬢のこと沢山知ってますけど、
御波 直
御波 直
お嬢は俺のことあんまり知らないですもんね。
神城 未来乃
神城 未来乃
…確かに、そうかもしれない。
御波 直
御波 直
じゃあ、落ち着くまで。
俺の昔の話ですけどね。
御波 直
御波 直
俺が何故ここで働いたか。
今なんでここにいるのか。
御波 直
御波 直
お嬢にだけ、お話しますよ。
落ち着いてないなら、落ち着かせればいい。


このまま無理に連れてったところで、


俺のクビは確定だろう。


それなら、最後に思い出話でも聞いてもらおう。
俺は、ギシッという音が響く、


小屋の扉に寄り掛かる。


この話す内容は、事実であり、


俺の人生を、大きく、大きく、変えた話だ。
御波 直
御波 直
お嬢ね。
御波 直
御波 直
俺の親、いないんですよ。
神城 未来乃
神城 未来乃
…!?

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