第19話

─17話─
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2019/12/18 22:48
両親は、俺が小五の時に交通事故で亡くなった。


俺の習い事を迎えに来るまでの間の道で。


「行ってきます」


「行ってらっしゃい」


「気を付けてな」


その会話が、家族で交わせる最後の会話だった。


近くにあったクレーン車が、


何故か倒れ始め、止まっていた車数台が巻き込まれた。


その数台の中に、俺の両親の車があった。


二人は運ばれた病院で亡くなった。
その病院こそ、晴子様と作助様が働く病院だった。
絶望し、これからを見失った俺に、


本物の家族の様に接して、笑顔にしてくれた。


その病院に、俺は感謝しか無い。


その時はお二人はいなかったけれど。


温かく接してくれた病院には感謝しか無かった。
俺は叔母の元で生活をしていた。


暴力や暴言なんて、そんなことは一切無く、


むしろ、優しすぎた位の夫婦は、


俺を大切に育ててくれた。


そして、高校二年生の時だった。


進路もこれからのことも全く想像出来なかった。


一体俺は何になればいいのだろう。


俺は、両親を置いて幸せになってもいいのだろうか。


そう考えていたら、合気道の練習中、
右の足を酷く怪我してしまった。


残念ながら、冷やしても全く効果がなく、


先生に病院に行くように促された。
仕方無く、あの病院で診て貰うことにした。


その時の担当の医師が作助様、


そして看護師が晴子様であった。
何故か、俺と二人は意気投合、


経過観察の為病院に行かなくてはならないのも、


何故か苦ではなかった。
暫く経って、俺の怪我が治った時の事だった。
神城 晴子
神城 晴子
御波くん完治!おめでとー!
御波 直
御波 直
ありがとうございます(笑)
神城 作助
神城 作助
晴子、本当に言うのか?
神城 晴子
神城 晴子
えー!貴方数分前まで乗り気だったのに何言ってるの!!
神城 作助
神城 作助
うっ。
何やら二人で話をされて、よくわからなかった。
御波 直
御波 直
あの…?
神城 晴子
神城 晴子
御波くん!
御波 直
御波 直
は、はい。
神城 作助
神城 作助
バイトとかって、高校は大丈夫?
御波 直
御波 直
バイト…?
はい、全然そういうのは緩くて…。
御波 直
御波 直
俺はやってませんけど…
その言葉に目を合わせるお二人。


え、何俺医者になっちゃうの?
神城 作助
神城 作助
俺の家で、是非働いてほしい。
神城 晴子
神城 晴子
お願い♪
御波 直
御波 直
…え?
開いた口が塞がらない。


まさにこの時言うべき言葉だろう。


家って何?どういうこと?料理とか無理だよ?


と、俺の頭は混乱しまくっていた。
御波 直
御波 直
で、そこから覚えてます?お嬢。
神城 未来乃
神城 未来乃
…覚えてない。
御波 直
御波 直
うっそ、俺にとってはすんごいビックリすることだったのに。
神城 未来乃
神城 未来乃
……聞かせて。
御波 直
御波 直
はい。確かそれで─────

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