第77話

没アイデア
31
2020/08/26 11:40
どうも皆さん、サクです。

タイトルのやつ、なんの没なの?と思った方、いるかと思います。

まぁ完結的に言うと、成瀬様のプロローグコンテストに応募する際の没案ですね。折角ほとんど作ったので、こんなんもあったんだよ〜的なノリで投下します。

ちゃんと選んだやつはもう既に作品化して、コメントも残してあるのでご安心を。
ですが、現段階では「成コン応募作品」は閲覧をお控えいただけると有難いです。
コンテスト自体が全て終わったら、連載するかしないか…という感じですけど一応鍵は外します。nmmnではないので。
というか、今回コンテストに応募させて頂いたという形ですが…
正直、賞うんぬんは1つも狙ってなくて。
そもそも、僕が取れるわけがないんですよ。色んな意味で。

んじゃあなんで応募したん?って話になると思うんですが、超端的に言うと「新鮮な第三者目線が欲しかった」だけですね。コンテストの事について書いたチャプターを読んだ時、「欲しいようであれば感想等も言います」と書いてあったので、じゃあやろうとなりました。


皆様の意見も勿論参考にさせて頂く部分は多いのですが、やはり親しい仲の方がコメントを下さる事が多いのもまた事実。
それは有難いことに越したことはないし、それが嫌だなんて1ミクロンも思ったことはありません。

ですが、作品への平等な評価となるとやはり関わってくるのも現実で。
あ、最初に言っておきますが、別に本気で小説家を目指している訳ではありません。この世はそんなに甘くないことも分かりきっていますのでね。


ですが、ここらで自分の成長具合を他人から測って貰うのもアリだなと思ったので応募させて頂いた次第です。
前置きが長くなってしまいましたが、これを経て見るか見ないかは画面の前の貴方に委ねます。
これは全て没ですしね。言うなれば失敗作です。それをご了承の後にご閲覧下さいませ。

この後はご自由にどうぞ。ちなみに、結構長いです。
━━━━━━━━━━━━━━━
1、レンズ(青春系)
あの時、僕は初めて「人」を何よりも美しいと思った。
きっとその瞬間、大きな歯車が噛み合ったんだと思う。


夕暮れ、下校時間のチャイムさえ遠ざかる。錆びて鍵が壊れた屋上は今や誰でも入れるので、蓮のお気に入りの場所となっていた。そこへ、昼休みにチャイムに追われて置いていってしまったデジカメを取りに、扉を潜る。だが、珍しくそこには先客が居た。

「あ、これって君の?」

フェンスの網目の黒がコンクリートに落とされて、陽は雲でさえ紅く染めゆくそれが体の半分だけを照らす。優しく吹いた風が指通りの良さそうなセミロングの黒髪と、セーラーの青いスカートを揺らして。濃く形作る影は伸びているのに、暗い印象なんて微塵もなく、柔らかい目元を映えさせる。

なんて、なんて美しいんだろうか

反射的にカメラが入っているポケットに手を突っ込んで、ふと、そのカメラを彼女が持っている事に気がつく。だから、何も考えず両手の指でフレームを翳した。ここにシャッターがあったのなら、どれだけいいだろうか。

「どうしたの?…もしかして、違ったかな」

再び声をかけられて、漸く我に返る。一瞬、世界が止まってしまった錯覚を覚えたのは、気の所為だ。自分は、初対面の相手に向かって何を不躾な事をしているんだ。そう言い聞かせて、名も知らぬ女子生徒の手の平の中にある愛用のデジカメへ手を伸ばす。

「あ、あぁいや、僕のです」

「やっぱり!はい、どうぞ」

「ありがとう、ございます」

人と話すのが苦手な訳でも無いのに、やけに煩い鼓動が言葉を発する事を邪魔してしまう。知らない、分からない、こんな音は。咄嗟に押さえつけようとして、たどたどしくなってしまった言葉に、彼女は嗤う事もせず受け取るのを待ってくれた。

「さ、チャイムも鳴ったし、君も帰った方がいいよ」

すると、片手に持っていた細い銀の縁どりがされた眼鏡を掛けようとする。その瞬間、蓮は彼女のその双眸に宿ったヒカリが曇ったように見えて。つい先程焼き付いた情景が、今までを何一つ知らない彼女なのに、最も美しい瞬間なのだと思えたから。

「…勿体ない」

「え?」

「眼鏡、かけるの勿体ないです。だって、さっきの貴方は本当に」

「本当に…?」

考えるより先に口走った言葉は自分の意思では止められず、捲し立てた勢いのまま声に出そうとした「美しい」。だが、その一歩手前で自然に言葉は途切れ、聞き返してきた彼女のきょとんとした無垢な顔に、再び我に返る。恥

ずかしい、ぽっと湧き出た謎の感情に戸惑い、唇ごと止まってしまった。何故か分からないが、彼女の目の前だと調子が狂うのだろうか。

「あっ、いや、その」

「ふふっ、不思議な方ね」

突如先の言葉を紡ぐ事を躊躇ってしまい、何か別の言葉を探そうと餌を求める金魚のような口の動きになる。早く何か言わなければ、でも何をどうやって言えば。単純そうに見えて複雑な自身の問いに、答えは中々出てはくれず。

そんな傍から見れば理解不能な自分を、微笑ましそうに細めた目で見てくる彼女の視線に、不可解な程に耐えられなくなって。言葉よりも先にこの場から離れたいという欲求に、今度は素直に従ってしまった。

「す、すみません。失礼します」

それだけを言い残すと、すぐに身を翻して階段を駆け下りる。途中、前のめりに転びそうになる程に、忙しなく足を動かして下駄箱から外へ出た。息を整えながら、何度も歩いて擦り込まれた帰路を辿る。

自分が分からない。何が起こったのかさえ定かでは無いような思考回路で、唯一強く深く理解出来たのは


あの瞬間、夕日を浴びた彼女の全てが、世界の何よりも綺麗だった。という事だけだ。





密かに夢を追いかける、奥麻 光
夢には出来ないと諦める、菅田 蓮


「モデルなんて、私には大きくて遠過ぎるけどね」

「僕のこれは趣味に過ぎませんよ」


それぞれが抱える苦悩

夢と現実の齟齬が生む不安


「ねぇ!もし、私が夢を叶えられたら…その時のカメラマンは君がいいなぁ」

「もし、貴女の言う…本当のカメラマンに僕がなれたら、被写体になってくれませんか?」

だから、互いに誓った


それはほんの口約束に過ぎない

指切りすら交わさぬ、小さな契り



それでも互いの、自分の言葉を守ろうとした2人は…




これは、2人の『夢』にフォーカスを当てた希望と葛藤の物語。
━━━━━━━━━━━━━━━
2、独善ヒーロー(現代ファンタジー)
どっぷりと濃藍の闇に浸かった夜の東京。都市の夜景を少し遠くの廃ビルの屋上から見下ろす男が1人。草臥れ気味のスーツに履き慣れた革靴は、何処にでも居そうなサラリーマンそのもの。実際彼は、とある会社で会社員を務めるごく一般的な男性だ。…見掛けだけは。

「…さて、今日も行くか」

口に咥えていたメビウスの灰を落として火を手で握って潰し、ぐしゃぐしゃになった煙草を地上に手放す。軽い火傷をしている筈なのに、その手はやけに綺麗なまま。燻らせていた副流煙はもう既に虚空に消え失せた。

それが俺だけの合図となったのはいつからだっけ。

三日月が浮かぶ宵の空に手を伸ばして、屋上階から飛び降りるように淵に立つ。普通の人間であれば、死んでしまう1歩手前のように見えなくもない。
…だが、彼は違う。

空へ1歩、踏み出すと同時に背中から広げたのは“龍の翼”だった。足で踏み締めるコンクリートは無くなったが、背のこれさえあれば夜空を舞うように滑空出来る。月光を浴びて照りつけられた翼は、青い鱗が張り巡らされていた。

そうして優雅に夜の街を見下ろすように飛ぶ。勿論、人々に目視されない程度に。まるでパトロールかのようにじっくり見ていくと、目立たない路地裏で塾帰りと思わしき少年に集る青年達がいた。どうやら、道を聞いている訳では無さそうで。

「おら!金出せよ。持ってんだろ?」

「も、持ってません…」

「塾通えるくらい持ってんだから持ってるに決まってんだろうが!」

「がはっ…!」

「まだやられてぇのか?あぁ''?」

青年3人組に金をせびられている中学生程の少年。1度か2度ほど殴られたようで、アザが見える。繁華街から差し込むネオンの光すら薄れるここで、そんな卑怯な事をする人というのはまだまだ蔓延っている。

そこ周辺に降りて翼を仕舞えば、もうそこらにいる普通のサラリーマンだ。

「おい、そのくらいにしてやったらどうだ?」

「…あ?んだよ、おっさん」

「あいつの方が金持ってんじゃねぇか?」

「おっさんが金くれるんだったらやめてやるよ」

見事に標的を変更し、こっちを見ながらニタニタと笑う柄の悪い3人組。徐々に近寄りながら殴る準備を初めている所を見ると、完全に大人を舐めているのが分かる。だから、彼は少し痛い目を見せてやろうとした。

「生憎今は財布を持ち合わせてなくてな。…だが1つ、忠告しておく。

これで焼かれたくなかったら、とっととこっから去れ。馬鹿ガキ共」

彼が指を鳴らせば手のひらに浮かんだのは、透き通るような青く美しい炎。人魂のようなそれは列記とした火そのものなので、勿論触れれば熱い。だが、人間がこんなもの出せるわけが無い。それこそ、マジックでも無い限り。そう思い込んでいる3人は、驚きはするもはったりだと信じ込む。

「っ!!青い、火…?」

「ば、馬鹿はお前だろ!分かってんだよ、それが本物じゃない事くらい…!」

「舐めてんじゃねぇぞジジィが!!」

「まだジジィじゃねぇよ。三十路でもないお兄さんになんてこと言いやがる」

3人のうちの1人が懐から折りたたみナイフを取り出し、素早く駆け寄ってくる。そのままどこかを刺すなり切るなりするつもりだろうが、そのちんけな刃は絶対に彼には届かない。

本気で焼き尽くそうと思えば出来るがさすがにそこまでする気は無いので、走ってきた青年がナイフを持っている右腕の服に向かって出現させた火の玉を掠らせる。

「うぁあああ!!あっつ、あっつい…死ぬぅ!」

「はぁ…だから言ったろ?
今回はその火消してやるが、またやったら次は消さねぇからな」

本当に熱いという事にすぐ様気付いた青年はその場でのたうち回るが、それはただの炎ではない。魔力の籠った炎なので、普通の消化方法では消す事は出来ないのだ。

充分痛い目になっただろうと思った彼は、青年に歩いて近付き服の部分に手を翳すと一瞬にしてその青い火を消してみせた。
この男は、普通じゃない。
それが嫌でも分かった3人組は、

「クソっ…」

この言葉だけを吐き捨ててその場から去った。

「あ、ありがとうございます!なんとお礼を…」

「俺はやりたいからやってんだ。見返りなんて求める必要も無い。…俺が怖けりゃ、早く行け」


絡まれていた被害者の少年が何度も頭を下げてきたが、彼がそう言うと気まずそうに目を逸らして黙って走り去って行った。

彼が人を助けた後はいつもこう言うのだ。でも、悲しくはないし寧ろ現代の人間達に助けられている。何故かって?本当の事はいつも、世間に広がらないからさ。




人間に擬態出来るファイアー・ドレイク
佐久間竜也



この町に少なからず漂う、“竜”の噂
しかし噂に過ぎないだろうとされていたそれは、
それはある一人の男の「ヒーローごっこ」だった


―――俺はただの偽善者に過ぎん。結局、自己満なんだから


その自身の言葉をモットーに彼は、いつも夜の東京を密かに守り続けている。

それは、ひとりよがりに過ぎないけれど。
それで良いのだ。



……そんな時、

「嘘、だろ…なんでお前がここにっ…!」

突如訪れる最大の危機
それは竜也だけでなく、他の人間たち…もっと言えば東京全体さえ巻き込んでしまいそうな未曾有の窮地


「ほっといたら死んじまうような、ヤワな種族だけど…いや、だからこそ俺はここに居るんだ!」


一人の男…いや、一匹のファイアードレイクは
例え名が知られていなくても、例え世間に受け入れられなくても、例え誰に信頼されなくても

たった1人で全てに立ち向かう





普段は普通のサラリーマンな彼の中に宿る“真のヒーロー”の生き様を描いた物語。
━━━━━━━━━━━━━━━

プリ小説オーディオドラマ