先生は塾生の中でも頭一つ飛び抜けてる私とあいつを当てようとする
でもあいつはよく寝てるから当たらない
しかも回想してて話全く聞いてなかった…
でも強がりな私は
そう言ってしまった
人の事素直じゃないとか言えないよね…
しかも苦手なやつだし…分かんない…
やばいやばいと思いながら席を立つと
机につっぷしたままま私だけに聞こえる声で隣の奴が教えてくれた
なんで教えてくれたのかも分からず
起きてたんだ!とも驚き
少し焦りながら答えを書きにいく
言ってくれた通りのやり方で解いているとそれっぽい答えになった
周りからも
おお!!
と小さな歓声があがる
理由とか置いといて今はとりあえずお礼を言わないと
ありがとう
…言えない。
なんでか分からない
ただまもるに素直になりたくないだけかもしれない
ていうか多分、きっと、
絶対にそうだ
さっきのカメラのことだって
彼にとっては好きな事を好きと言うのが普通の事なのかもしれないが
素直に言わなくちゃ…
でもどうしても言えそうになかったので
自分って情けないなぁ…と思いながら
付箋に
ありがとう
と書いて彼の机にこっそり貼った
付箋に気づいたのかあいつは頭を少しあげて
付箋を手に取った
それからずっと私はあいつの方を向けなかった
授業が終わった
こんなに授業中上の空だったのは初めてだ
先生と塾生は出口に向かった
今日もみんなが帰るのを待って空を撮ろう
それで心を落ち着かせよう
そう思っていたら…
今話すの1番気まずいやつ!!
と言いつつ少し嬉しそうに付箋を眺めている
直接言うのが恥ずかしかったから
なんて言うのはもっと恥ずかしいので
と強がりの嘘を吐く
鋭い…
勘が鋭い所も怖い
ありまくりだけど…
彼は怪しい笑みを浮かべ首を傾げる
私が嘘をついているのはもうバレバレなのだろう
とりあえず話を逸らす
と言いながら笑う
あれ…こんなに楽しかったっけ?
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!