あの後 , 私の家のマンションまできちんと
送ってくれたくろ。
そんなくろは今 , 私の手を握りながら
玄関の前で下を向いて佇んでいる。
くろの手を触ったのなんて , 何時ぶりかな。
だからそばにいさせてね…なんて , 口から出かけた
言葉は飲み込んで。
突き放されたくなくて。
早口で捲したてるように , くろに話した。
名残惜しいけど , くろの温もりからそっと離れて。
これ以上 , くろに背負わせてしまわないように。
これ以上 , 変な事を口走る前に。
くろに背中を向けて , 家へと入った。
その場から逃げた私は , くろがそんな事を
呟いてたなんて…知る由もない事。
くろに握られてた右手を眺めながら ,
ぼーっとした頭で , そんな事を考えた。
気怠い身体を起こして , ベッドに入る準備を始めた。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。