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第6話

起床-episode5
33
2023/02/11 08:11

一ノ瀬 憂
ず … い ! …み …い!
一ノ瀬 憂
泉!

涼風 泉
…あれ … 一ノ瀬じゃん
目の前には何故何故か一ノ瀬がいた
激しく走ったのか肩を上下させている
一ノ瀬 憂
寝てた…んだよな?
涼風 泉
ぇ … うん たぶん
曖昧になるのは許してほしい。
だって本当に良く覚えていないから
一ノ瀬は呆れた顔をして言った
一ノ瀬 憂
風邪ひくぞ。そんな所で寝てたら
涼風 泉
あれ 向日葵は ?
いつもなら 私が声を出すと ぴょこぴょこと辺りを飛び回って
厭でも視界に入ってくるのに
一ノ瀬 憂
ひま…わり?誰かの名前?
涼風 泉
うん。居なかった?女の子?
一ノ瀬 憂
泉しか居ないけど。
本当に向日葵は幽霊なのかもしれない
涼風 泉
てか一ノ瀬は何でここにいるの?
一ノ瀬 憂
探してた。泉を。
涼風 泉
私を?
一ノ瀬 憂
これ、渡そうと思って
そうやって差し出された手には若葉色のノート。
表紙には綺麗な字で 『一ノ瀬 憂』と書かれている
涼風 泉
これ一ノ瀬のだけど
一ノ瀬 憂
ほら、最近 泉授業休んでるじゃん。
だからノート。泉の分もとっといた
確かに最近屋上に通っていて、あまり授業に出ていなかった。
だからといって …。
お人好しすぎるのではないだろうか。
私ならば態々こういうことはしない。
涼風 泉
…ありがとう。
ぱらぱらとページを開いてみると どのページにしても綺麗にまとめられていた
カラフルなマーカーペンは私には眩しい感じがした。
こまめに貼ってあるふせんも 、 ノートの使い方も
涼風 泉
思ったこと言っていい?
一ノ瀬 憂
なに?
涼風 泉
ノート女の子みたいだね
一ノ瀬 憂
うるさいな
涼風 泉
ふふ 、 いいと思うよ
一ノ瀬 憂
ぁ …
一ノ瀬 憂
笑うんだな、泉って
涼風 泉
そりゃ笑うけど何
心が無い奴みたいに言うのはやめてほしい。
興味が無いだけで一応、いや全然人間の部類である。
一ノ瀬 憂
あ 戻った
涼風 泉
どことなくイラつく輩だな。
表情がころころ変わるのが少し面白い。
犬系男子…とでも言うのだろうか
一ノ瀬 憂
一緒に帰ろうよ

一ノ瀬は屋上のドアを指差した。
涼風 泉
… もう そんな時間 なんだ
一ノ瀬 憂
部活無い日だしね
涼風 泉
部活無いのに、なんでこんな遅いじかん…
一ノ瀬 憂
だーかーら、探してたんだって。泉を。
    



           え。


私は大きく目を見開いた
まさか自分のためだとは
涼風 泉
お人好しが過ぎる…
一ノ瀬 憂
どーも

にしし っ と笑った 一ノ瀬の 顔もまた 夏が似合っていた。

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