目の前には何故何故か一ノ瀬がいた
激しく走ったのか肩を上下させている
曖昧になるのは許してほしい。
だって本当に良く覚えていないから
一ノ瀬は呆れた顔をして言った
いつもなら 私が声を出すと ぴょこぴょこと辺りを飛び回って
厭でも視界に入ってくるのに
本当に向日葵は幽霊なのかもしれない
そうやって差し出された手には若葉色のノート。
表紙には綺麗な字で 『一ノ瀬 憂』と書かれている
確かに最近屋上に通っていて、あまり授業に出ていなかった。
だからといって …。
お人好しすぎるのではないだろうか。
私ならば態々こういうことはしない。
ぱらぱらとページを開いてみると どのページにしても綺麗にまとめられていた
カラフルなマーカーペンは私には眩しい感じがした。
こまめに貼ってあるふせんも 、 ノートの使い方も
心が無い奴みたいに言うのはやめてほしい。
興味が無いだけで一応、いや全然人間の部類である。
どことなくイラつく輩だな。
表情がころころ変わるのが少し面白い。
犬系男子…とでも言うのだろうか
一ノ瀬は屋上のドアを指差した。
え。
私は大きく目を見開いた
まさか自分のためだとは
にしし っ と笑った 一ノ瀬の 顔もまた 夏が似合っていた。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。