ツインテールのフワッとした栗色の髪の毛は宙を舞う。
余程嬉しかったのか、香織の頬は少し紅色に染まる。
私達の在るべき姿……?
少し意地悪そうに微笑むその姿は柳とは違った、でも二人とも温かい視線を私に向けていた。
少しニヤッと笑うと、大きく息を吸った。
実はこれは話そうか迷っていた。
勿論、真実についてだ。
そう言った香織の目は何かを決意したような強い強い目だった。
……そうだ。
私も、怯えてばかりのままじゃない。
”辛いときも前を向いて“
なんで私はこんな事に気が付けなかったんだろう。
香織がこんなに強い目なのに、私がこんなに怯えていてどうするんだ。
怯えていては何も始まらない。
そう教えてくれたのは柳だ。
どんなに深い穴に落ちても、必死によじ登るのが私だ。
上にいる人に助けを求めずに自力で這い上がっていくんだ。
それが、私じゃないか。
何を諦めているんだ。
最初から何もしないのは負けと認めたものだ。
”進め、藍。“
柳の声が遠くで聞こえた気がした。
柳。今、私は進むよ。
毎日。毎日。それも、少しずつ。
一歩にも満たないその距離を__
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。