今日の朝の出来事を思い出すと、私の口は溜め息しか出てこない。
でも、アルビノを馬鹿にされるのは、柳を否定するのと同じ。
アイツらの行動は凄く腹立たしい。
そう自分に言い聞かせるが、やはり腹立たしいものは腹立たしい。
どうしようもない怒りの矛先は結局自分に戻ってくるのだろうな、と思いながら病院へ行く。
ガラッ
自分の娘が大変なのに、こうやって私にありがとう、と言えるのは凄い事だなぁ……と感心する。
病院までの道のりで沙弥達への怒りを募らせていた私とは大違いだ……
たったこれだけの会話で病室の空気が下がった気がする。
ふと時計を見ると午後7時を回っていた。
柳のいる202号室のドアを閉め、出口まで歩く。
すると、目の前に誰かいることに気がついた。
人と違う病気……?
まんま私じゃん。
右目見えてないし。
そう言われてもあ、そうなんだ、くらいの感情しか芽生えなかった。
多分、柳と一緒にいたことで、まぁ、私もだけど、そういう特殊な扱いを受ける人たちに慣れてしまったのだろう。
凄い気まずいなぁ……
それからお互いに黙っていた。
すると、香織ちゃんが顔をあげた。
友達……?
多分この子は大丈夫。
なんかわからないけどとりあえず本能がそういってる気がする。
今日の朝も私の味方(?)ぽかったし、同じ病気を抱えてるから、辛さとかもわかってくれる筈。
“出来ないから。”
声には出さずに言ったその言葉。
違う……違う……!
それは……違うんだ。
柳のお母さんが思っていたことがわかった気がする。
“最後まで信じ抜くのが母親の役目。”
“そして、それは藍ちゃん。柳の親友の貴女の役目でもあるわ。”
医院長だ。
私達はその言葉に従うべく、“親友の役目”を話せずに家に帰っていった。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。