そう言って見せてもらった絵はとても綺麗だった。
水平線と夕焼けを描いた絵で、太陽の煌めきが綺麗に描かれている。
綺麗、というよりは神々しいようなその絵に誰もが釘付けになるのは間違いないだろう。
しかし、やっと出た言葉が『うん。』しか言えない自分の語彙力は呪いたくなる。
でも、それしか出ないくらい神々しい絵だと解って貰えれば私の語彙力もきっと理解されると思う。
だって、写真よりも迫力を感じるもん!!
とりあえず今の私が言えることは……
語彙力っ!増えろっ!
皆席を立ちぞろぞろと教卓の前に集まってくる。
が、柳が作品を置いた途端、今までざわついていた教室が一瞬で波を打ったように静まり返った。
そして、静まり返った教室はまたざわざわと騒ぎ出す。
口を開いて絶句している者もいる。
この静けさ_いや、騒がしさと言うべきか_を見ると、私の語彙力は普通だとわかってくれる筈だと信じたい。
というか、きっと皆共感してくれる。
そういった先生の声に耳を傾けている暇など私達には無かった。
そう言った先生は柳の絵を見にきた。
絵を見た瞬間やはり先生は一旦停止。
そう言った柳の表情はとても嬉しそうだ。
肩まで切り揃えた髪が少し揺れている。
そして、このあと私にしか聞こえないような小さな声で言った。
“凄いでしょ?これがアルビノの力!”
関係ないだろアルビノ……
なんて、言うわけがない。
柳は右目が青色。
そして、髪の毛が白っぽい。
でも、普段はハーフという設定で、青色じゃない方の目を青色のコンタクトを付けて過ごしている。
本人曰く、青色を否定するのは嫌だ、という事らしい。
柳らしいなぁ……っていつも思う。
そう先生の声がするとみんなぞろぞろと席に戻っていった。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!