龍友side
あなたが泣いてる理由。
多分、誰かと喧嘩。
思い当たるのは玲於しかいなかった。
いつも話すのは玲於との、喧嘩。
よほど仲がいいんだと思ってて
玲於を探し出してやる。
見つけて、呼ぶと
すると、玲於は呆れた顔して僕に言う。
ちょっとだけ口角を上げて帰っていく。
なんだよ、僕にもあるって言うのか?
思い当たらない。
そう、微笑む彼女に僕は胸を高鳴らす。
そんな、嘘をあなたについた。
玲於の言っていたことが頭から離れない。
僕より背の低い彼女。
上を見上げる感じにグッとくる。
そう聞くとあなたは固まった。
何かあるのか。
決して僕と目を合わせないあなた。
でも、本人は無いと言ってて…
そこから無言になる僕達。
いつもはこんなの無かったのに。
変な感じでモゾモゾする。
沈黙を破ったのはあなたで
いつの間にか駅に着いていた。
手を振るとニコッと笑ってあなたも手を振る。
ん ~ 、なにがいかんかったんやろ。
あなたに何か悪いことでも…?
ああ、自覚がないのが悔しい。
実は傷つけてましたなんて最悪だし。
久しぶりにこんなに悩んだ。
「 裕太くん、ヒマ? 」
" 裕太くん " とは僕の幼馴染み。
幼稚園から中学までずっと一緒にいた友達。
高校は流石に離れたけど今でもこうして連絡は取り合っている。
『 なんや。』
「 ちょっと飲もうや。」
『 大人みたいな事言っとるなー 』
「 いつもんとこ。」
『 はいよ 』
裕太くんは優しい。
母さんにご飯は要らないとだけ伝え、
僕らのいつもの場所。
駅前の喫茶店。
よく来てたなぁ、なんて思いながら喫茶店へ向かう。
チャランチャラン…そうドアのチャイムがなれば
奥から聞こえる接客声。
店員さんに言われた方を見ると裕太くんがいた。
裕太くんは変わらず元気そうで
ちょっと違う方向性の話に聞こえてしまう。
けど、それほど一緒にいて友達、親友として大好き。
やっぱ、さすが。
僕の呼び出した理由に気づいてる。
女の子がいて
今日、その子が泣いてた。
その理由として上がったのはある男子。
男子に問いつめたところ、男子は
僕に傷つけるのはやめろ。
そう言った。
話をすれば
顔を悩ませてる。
やっぱ、裕太くんも分からないのか。
なら、僕も…
ん ~ 、裕太くんに相談したのもいいが
やっぱ、僕には分からん。
関西弁の特徴。
ただ怒ってなくても怒ってるように聞こえて
周りから心配される。
実は僕ら喧嘩なんかしてない。
はぁ、裕太くんといると楽しい。
昔に戻ったみたいで何でも言える。
てか、なんでこんなあなたの事で悩まされてんだ!?
こんなちっさな悩み抱えたことないのに。
暗くなった空をパッと見あげた。
はぁ、文化祭…の時期。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。